食事摂取基準28 指標の特性の総合的な考慮2

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、指標の特性の総合的な考慮を説明しています。その後半を紹介します。

生活習慣病の発症予防に資することを目的に目標量が設定されていますが、生活習慣病の発症予防に関連する要因は多数あり、食事はその一部です。そのため、目標量を活用する場合は、関連する因子の存在とその程度を明らかにして、これらを総合的に考慮する必要があります。

例えば、喫煙や運動不足は多くの生活習慣病の危険因子です。栄養面でも、食塩や飽和脂肪酸の過剰摂取など、単一の生活習慣病に複数の栄養素が関連していることが多くなっています。それらの存在を確認するとともに、それぞれの因子の科学的根拠の強さや発症に影響を与える程度を確認する必要があります。

さらに、対象者や対象集団における疾患のリスクがどの程度で、関連する因子を有している状況やその割合がどれほどかを把握した上で、どの栄養素の摂取量の改善を目指すのかについて、総合的に判断することになります。

食事摂取基準では、目標量についてエビデンスレベルを示しています。目標量の活用に当たっては、エビデンスレベルも適宜参照するのが望ましいとされます。

食事摂取基準では複数の栄養素に対して基準が策定されているため、最も満たすことが難しい基準に合わせて食事を計画する(食品を組み合わせる)場合、比較的基準を満たしやすい他の栄養素の摂取量が推奨量を大きく上回る可能性があります。

このような場合、摂取量が耐容上限量に近いほどの多さでない限り、そのまま食事を提供して問題はありません。いわゆる健康食品やサプリメントなどではない通常の食品を複数組み合わせた食事で、耐容上限量を超える栄養素摂取量となる可能性は低くなっています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕