食事摂取基準309 リン9

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から多量ミネラルのリンの過剰摂取の回避の「耐容上限量の策定方法」の続きを紹介します。

〔耐容上限量の策定方法〕
*成人・高齢者(耐容上限量)
正味のリン吸収量の指標と考えられる1日尿中リン排泄量に基準となる値は設定されていません。

尿中リン排泄量と健康障害との関係についてのデータは少なく、腎結石患者と健康な人を比較した研究では、腎結石患者ではリン摂取量が2670mg/日と、健康な人の1790mg/日に比べて有意に高く、尿中リン排泄量も腎結石患者で617.7mg/日と、健康な人の358.5mg/日に比べて有意に高かったことが報告されています。

このことから、リン摂取量が増加して、尿中リン排泄量は増加することで腎結石の発症リスクが高まることが示唆されますが、症例数は少なく、十分な科学的根拠はありません。

したがって、従来のリン摂取量と血清リン濃度上昇の関係に基づいて、耐容上限量を設定することが現時点では最も妥当な方法と考えられます。

ここで、血清無機リン(mmol/L)、吸収されたリン(mmol/日)については、次の式で示される関係が提案されています。

「血清無機リン=0.00765×吸収されたリン+0.8194×(1−e(−0.2635×吸収されたリン))」

これに、リンの吸収率を60%と見込み、血清無機リンの正常上限4.5mg/dL、リンの原子量(モル質量)30.97を用いると、血清無機リンが基準値上限となる摂取量が4275mg/日となります。

これを健康障害非発現量と考え、性と年齢区分によってはカルシウム/リン比の低い食事によって骨代謝に影響がある可能性を考慮して、不確定因子を1.5として、2850mg/日(丸め処理を行って3000mg/日)を成人の耐容上限量としました。

この値は、リン摂取量と食後の血清リン濃度の関係で示されているように、リン摂取量が3000〜3600mg/日で血清リン濃度が基準値上限を超えていることと比較しても、おおむね妥当な値と考えられます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕