食事摂取基準329 鉄18

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から微量ミネラルの鉄の過剰摂取の回避の「耐容上限量の策定」の続きを紹介します。

〔耐容上限量の策定〕
*乳児(耐容上限量)
乳児に過剰な鉄摂取を行った場合には、亜鉛や銅の吸収率の低下、腸内細菌叢の変化、成長制限が生じるリスクがあるとされています。
例えば、13.8mg/日の鉄を28日間投与された低出生体重児では、20週目に赤血球のスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性の低下が認められています。

一方、アメリカでは新生児を含む乳児用調整乳には全て4〜12mg/Lの鉄強化が行われており、10mg/日に近い鉄を摂取している乳児が相当数存在するものと推定できます。

しかし、このような出生直後からの積極的な鉄補給の有害影響は、厳密にデザインされた試験では実証されていません。

現状では、乳児における過剰な鉄摂取の影響が明確でないことから、乳児に対する耐容上限量も設定していません。

*妊婦・授乳婦(耐容上限量)
ヘモグロビン濃度13.2g/dL以上の貧血でない妊娠女性に50mg/日の鉄を硫酸第一鉄として投与すると、胎児発育不全と高血圧の割合が増加するという報告があります。

また、妊娠または授乳中の女性に50mg/日の鉄を与えた場合に、亜鉛の利用が低下したという報告も散見されます。

これらのことから、貧血ではない妊婦・授乳婦への鉄の補給は、合理性がなく、むしろ母体および胎児に健康障害を生じる可能性があると考えられます。

現時点で十分なデータがないことから耐容上限量の設定は見合わせますが、貧血でない妊婦・授乳婦が鉄サプリメント等を利用することは控えるべきです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕