食事摂取基準377 ヨウ素13

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から微量ミネラルのヨウ素の過剰摂取の回避の「耐容上限量の策定方法」の続きを紹介します。

〔耐容上限量の策定方法〕
*妊婦・授乳婦(耐容上限量)
日本の妊産婦のヨウ素の摂取量については食物摂取頻度調査票を用いた調査が存在するのみであり、正確な実態は不明です。

妊娠女性7190人を対象にした中国での研究は、尿中ヨウ素排泄が500μg/Lを超える集団では甲状腺機能低下を起こすリスクが明らかに高まっていることを示しています。

このヨウ素排泄量は50kgの女性において約600μg/日のヨウ素摂取に相当します。

しかし、中国における高ヨウ素摂取は、ヨウ素添加食卓塩またはヨウ素濃度の高い地下水の利用による連続的なものであり、間欠的高摂取である日本人に、そのまま適用することはできません。

実際に、我が国ではヨウ素に起因する妊婦の甲状腺機能低下は、ほとんど報告されていません。

一方、甲状腺機能低下を示した我が国の新生児に関して、母親の妊娠中のヨウ素摂取量を1.9〜4.3mg/日と見積もる報告があります。

しかし、この報告は、摂取量の推定法の詳細が明確でなく、妊婦の耐容上限量を策定する根拠としての信頼性は低くなっています。

このように、我が国の妊婦を対象とした報告は十分ではありませんが、妊娠中はヨウ素過剰への感受性が高いと考えられるため、妊婦は非妊娠女性よりもヨウ素の過剰摂取に注意する必要があります。

一方、0〜5か月児では、哺乳量を0.78L/日とすると、母乳中ヨウ素濃度が320μg/Lを超えると耐容上限量250μg/日を超えるヨウ素摂取量となります。

母親のヨウ素摂取量と母乳中ヨウ素濃度の関係式は不明ですが、母乳のヨウ素濃度を高くしない観点から、授乳婦のヨウ素の過剰摂取にも注意する必要があります。

以上より、妊婦と授乳婦の耐容上限量は、成人女性の耐容上限量(3000μg/日)に不確実性因子1.5を用いて2000μg/日としました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕