「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から微量ミネラルのセレンの過剰摂取の回避の「耐容上限量の策定方法」を紹介します。
〔耐容上限量の策定方法〕
*成人・高齢者(耐容上限量)
慢性セレン中毒で最も高頻度の症状は、毛髪と爪の脆弱化・脱落です。
その他の症状には、胃腸障害、皮疹、呼気にんにく臭、神経系異常があります。
誤飲や自殺目的でグラム単位のセレンを摂取した場合の急性中毒症状は、重症の胃腸障害、神経障害、呼吸不全症、心筋梗塞、腎不全などです。
食品のセレン濃度が高い中国湖北省恩施地域において、脱毛や爪の形態変化を伴うセレン中毒が認められました。
5人の中毒患者(平均体重60kg)の中で最も少ないセレン摂取量は、血中セレン濃度から913μg/日と推定されました。
その後の再調査では、5人全員がセレン中毒から回復しており、血中セレン濃度から推定されたセレン摂取量は800μg/日でした。
この結果から、毛髪と爪の脆弱化・脱落を指標にした場合、最低健康障害発現量は913μg/日、健康障害非発現量は800μg/日と理解できます。
アメリカのワイオミング州と南ダコタ州の牧場において、家畜にセレン過剰症が出現しましたが、住民にセレン中毒症状は認められませんでした。
対象者142人のセレン摂取量は最大で724μg/日でした。
このことは、毛髪と爪の脆弱化・脱落を慢性セレン中毒の指標とした場合のセレンの健康障害非発現量(800μg/日)が妥当であることを示しています。
以上より、成人および高齢者の耐容上限量は、体重当たりの健康障害非発現量(800/60=13.3μg/kg/体重/日)に不確実性因子2を適用した6.7μg/kg/体重/日を参照値として、これに性別および年齢区分ごとの参照体重を乗じて設定しました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕






