「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から微量ミネラルのモリブデンの過剰摂取回避の「耐容上限量の策定方法」を紹介します。
〔耐容上限量の策定方法〕
*成人・高齢者(耐容上限量)
ヒトのモリブデン中毒に関する研究は多くはありません。
食事からのモリブデン摂取量が0.14〜0.21mg/kg体重/日の人に高尿酸血症と痛風様症状を観察したという報告があります。
アメリカ環境保護庁(EPA)は、この報告に基づき、モリブデンの最低健康障害発現量を140μg/kg体重/日、不確実性因子を30として得られる5μg/kg体重/日を、モリブデン慢性経口曝露の参照値としています。WHOも、この参照値を採用しています。
しかし、全米研究評議会は、この報告の高尿酸血症と痛風様症状にモリブデンが関与していることは疑わしいとしています。
4人のアメリカ人にモリブデン1490μg/日を24日間摂取させた上で、さらにモリブデン安定同位体を経口投与した実験では、モリブデンの平衡は維持されて、有害な影響は認められていません。
この実験でのモリブデンの総投与量である約1500μg/日を健康障害非発現量と考えて、被験者の平均体重82kgで除して、不確実性因子2を適用すると9μg/kg体重/日になります。
この値に、成人の性別および年齢区分ごとの参照体重を乗じて平均すると、男性が585μg/日、女性が464μg/日となります。
一方で、我が国の穀物と豆類の摂取が多い厳格な菜食者(成人女性12名、平均体重49.1kg)の献立を分析した研究では、モリブデン摂取量の平均値を540μg/日と報告していますが、健康障害は認められていません。
以上、アメリカ人を対象にした実験および我が国の女性菜食者のモリブデン摂取量を総合的に判断して、成人のモリブデンの耐容上限量は、年齢区分に関わらず、男性600μg/日、女性500μg/日としました。
なお、ここで設定した成人男性の耐容上限量は、ラットの健康障害非発現量に基づいて設定されている欧州食品科学委員会の値と同じです。
*小児・乳児(耐容上限量)
十分な報告がないため、小児および乳児の耐容上限量は設定されていません。
*妊婦・授乳婦(耐容上限量)
十分な報告がないため、妊婦および授乳婦に特別な耐容上限量は設定されていません。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕






