「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、生活習慣病とエネルギー・栄養素との関連について説明しています。その中の高血圧と特に関連の深いエネルギーの「アルコール」を紹介します。
〔アルコール〕
アルコール摂取による血圧への影響は、短期効果と長期効果で異なります。
介入試験のメタ・アナリシスでは、低用量アルコール摂取(純アルコール14g未満)は血圧に影響を与えていません。
一方、高用量アルコール摂取(純アルコール>30g)は、6時間以内に血圧を3.5/1.9mmHg低下させたが、13時間以上経過後の血圧を3.7/2.4mmHg上昇させたとしています。
一方、多くの疫学研究では、習慣的飲酒量が多くなればなるほど、血圧値および高血圧の頻度が高く、経年的な血圧上昇も大きいことが示されています。
コホート研究のメタ・アナリシスは、収縮期血圧と飲酒量との関係はほぼ直線的であり、その関係に閾値を認めないことを示しました。
また、アルコール制限による降圧効果が報告されています。
我が国の介入試験では、飲酒習慣のある軽症高血圧患者の飲酒量をエタノール換算で平均56mL/日から26mL/日に減じると、収縮期血圧の有意な低下が認められました。
介入試験のメタ・アナリシスでもアルコール制限の降圧効果が示されており、その効果は用量依存的でした。
「高血圧治療ガイドライン2019」では、高血圧者の飲酒は、エタノールで男性20〜30mL/日以下、女性10〜20mL/日以下にすべきであるとされています。
このアルコール摂取量の目標値は、先述の我が国の介入試験の報告に近い値であり、海外のガイドラインでも同様です。
エタノールで20〜30mLはおおよそ日本酒1合、ビール中瓶1本、焼酎半合弱、ウイスキーダブル1杯、ワイン2杯弱に相当します。
少量から中等量の飲酒によって冠動脈疾患リスクが低下することが、国内外において報告されています。
しかし、循環器疾患リスクが最も低いのは飲酒習慣のない者であり、少量のアルコール量でも血圧上昇および循環器疾患リスクを高めるとの報告もあります。
さらに、飲酒量が増加するほど脳卒中、特に脳出血のリスクが上昇することも報告されています。
脳卒中の多い日本人では、高血圧予防の意味でも、飲酒をしない者には少量の飲酒を勧めるべきではありません。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕






