食事摂取基準443 脂質異常症17

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、生活習慣病とエネルギー・栄養素との関連について説明しています。その中の脂質異常症と特に関連の深いエネルギー・栄養素の「低HDL-コレステロール血症」を紹介します。

〔低HDL-コレステロール血症〕
介入試験をまとめたメタ・アナリシスによれば、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸すべてがHDL-コレステロールを有意に上昇させることが示されていますが、その変化量は僅かであり、有意な変化は認められていません。

一方、飽和脂肪酸を減らすことで総コレステロール、LDL-コレステロールを低下させますが、HDL-コレステロールに関しては一定ではないという報告が多くあります。

また、HDL-コレステロールへの影響を飽和脂肪酸の炭素数別に検討したメタ・アナリシスによると、炭素数が12の飽和脂肪酸(ラウリン酸)だけで有意な上昇が観察されています。

α-リノレン酸をサプリメントとして負荷して血清脂質の変化を観察した17の介入試験をまとめたメタ・アナリシスでは、HDL-コレステロールの有意な低下を示したと方谷されています。

しかし、この研究では摂取量は報告されていません。

別の介入試験のメタ・アナリシスでは、飽和脂肪酸をn-6系脂肪酸や炭水化物に置き換えることでHDL-コレステロールの低下が観察されています。

13の介入試験のメタ・アナリシスでは、1%エネルギーのトランス脂肪酸を一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸に置き換えることでHDL-コレステロールの上昇が観察されています。

また、卵黄によるコレステロール摂取によって、僅かながらHDL-コレステロールは増加しますが、LDL-コレステロールの上昇の方が大きいことも示唆されています。

糖類の種類や構造、摂取方法等によって異なる生理学的特徴を示す指標の1つである食事性グリセミック・ロード(glycemic load)とHDL-コレステロール値が負の関連を示した研究があります。

しかし、上記の研究が全て現実的に、どの程度の意味を持つのかは十分には明らかにされていません。

アルコール摂取量の増加に伴ってHDL-コレステロールは上昇しますが、実験レベルではHDLのコレステロール引き抜き機能はむしろ低下するため、アルコールによるHDL-コレステロール上昇が及ぼす心血管疾患予防の効果はないと考えられます。

疫学的には多量飲酒は虚血性心疾患や脳卒中の危険因子であり、少量飲酒によるこれらの疾患や総死亡リスクの予防効果も現在は否定的です。

血圧上昇、脳出血や発がんなどのリスク上昇による健康被害を考慮すると、アルコールはできるだけ控えることが望ましいとされています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕