「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から、重症化予防を紹介します。
◎発症予防との違い
すでに何らかの疾患を有する場合は、その疾患の重症化予防を他の疾患の発症予防よりも優先させる必要がある場合が多くなっています。
この場合は、望ましい体重の考え方も、その値も優先させるべき疾患によって異なります。
◎食事調査の過小評価を考慮した対応の必要性
種々の食事調査は、日間変動による偶然誤差のほか、系統誤差として過小・過大申告の影響を受け、集団レベルでは実際のエネルギー摂取量を過小評価するのが一般的です。
食事指導においても、指導を受ける者に同等の過小評価が生じている可能性を考慮した対応が必要です。
◎減量や肥満の是正への考え方
高血圧、高血糖、脂質異常の改善・重症化予防に、減量や肥満の是正が推奨されています。これらの生活習慣病の重症化予防における目標BMIは必ずしも、総死亡率によって定義したBMI範囲と一致していません。
生活習慣病改善(食事や運動)の介入研究においては、目標BMIに達していなくても、一定の体重減少率によって生活習慣病関連指標が改善することが知られています。
高血圧患者に対するメタ・アナリシスでは約4kgの減量により、収縮期で−(マイナス)4.5mmHg、拡張期で−(マイナス)3.2mmHgの血圧降下があると報告されています。
内臓脂肪の減少と血糖(糖尿病患者を除く)、インスリン感受性、脂質指標、血圧の改善の関係を見ると、指標の優位な改善を認めた研究における内臓脂肪の減少率は平均22〜28%、体重減少率で7〜10%に相当します。
さらに、特定保健指導の終了者3480人を対象にした検討では、指導後6か月で3%以上の体重減少を認めた者では、特定健診のすべての健診項目の改善が認められました。
肥満者においては目標とするBMIへの減量を長期的な目標としつつ、上記のような減量をまずは達成し、それをリバウンドなく維持することが重症化予防の観点では望ましいことです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕