「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から、参考資料の「推定エネルギー必要量」を紹介します。
〔基本的事項〕
エネルギー必要量は、WHOの定義に従い、「ある身長・体重と体組成の個人が、長期間に良好な健康状態を維持する身体活動レベルのとき、エネルギー消費量との均衡が取れるエネルギー摂取量」と定義されます。
なお、身体活動レベルは、「エネルギー消費量÷基礎代謝量」で定義されます。
さらに、エネルギー消費量は、比較的短期間の場合には「そのときの体重を保つ(増加も減少もしない)ために適当なエネルギー」と定義されます。
また、乳児・小児、妊婦または授乳婦においては、エネルギー消費量には良好な健康状態を維持するための組織沈着あるいは母乳分泌量に見合ったエネルギー量という意味合いを含みます。
エネルギー消費量が一定の場合、エネルギー必要量よりもエネルギーを多く摂取すれば体重は増加して、少なく摂取すれば体重は減少します。
したがって、理論的にはエネルギー必要量には「範囲」は存在しません。これはエネルギーに特有の特徴であり、栄養素と大きく異なる点です。
すなわち、エネルギー必要量には「充足」という考え方は存在せず、「適正」という考え方だけが存在することを意味します。
その一方で、エネルギー必要量に及ぼす要因は性・年齢区分・身体活動レベル以外にも数多く存在し、無視できない個人間差(または個人差)として、それは認められます。
したがって、性・年齢区分・身体活動レベル別に「適正」なエネルギー必要量を単一の値として示すのは不可能であり。同時に、活用の面からも、それはあまり有用ではありません。
自由な生活を営んでいる人のエネルギー必要量を知るには、体重が一定の条件下で、(1)何らかの方法で食事調査を行い、エネルギー摂取量を測定する方法、(2)何らかの方法でエネルギー消費量を測定する方法(最も正確に測ることができる方法は二重標識水法)、(3)何らかの方法で基礎代謝量と身体活動レベルを測定して、この積を取る方法の3種類が知られています。
今回の食事摂取基準では、3つ目の「基礎代謝量と身体活動レベルを測定して、この積を取る方法」を採用しています。
なお、ここで与えられる数値は対象者または対象集団にとって推定値であるため、推定エネルギー量と呼んでいます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕