食事摂取基準55 エネルギー必要量の推定方法3

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から基礎代謝量と身体活動量を用いた推定方法の基礎代謝量基準値を紹介します。

〔基礎代謝量基準値〕
基礎代謝量とは、覚醒状態で必要な最小限のエネルギーです。実験参加者をエネルギー代謝測定室に入れ、熱となって放散されるエネルギーを測定します。

早朝空腹時に快適な状態(室温など)において安静仰臥位・覚醒状態で測定すれば、これが基礎代謝量となります。この方法は、基礎代謝量を直接測定するため、直接法と呼ばれます。

一方、直接測定ではなく、直接測定で得られた値を用いて、性・年齢・身長・体重などから推定する方法(推定式の開発)も数多く試みられています。

複数の推定式が提案されているものの、一定以上の精度が確認された推定式は成人を対象としたものが多くなっています。

なお、日本人の小児については、「昭和44年改定・日本人の栄養所要量」で示された体表面積に基づく式など各種推定式の妥当性を検討した論文があります。

実測された基礎代謝量を体重1kg当たりで表現し(kcal/kg/日)、性・年齢区分別にデータを統合して、それぞれ代表値を求める方法があります。

1980年以降、我が国で測定された50の研究の結果の観察値から代表値(体重1kg当たりの基礎代謝量)を求めて、これに参照体重を乗じると参照体重の場合の基礎代謝量基準値となります。

具体的には、各年齢区分で重みづけをせずに平均値を求めています。

なお、65〜74歳の男性は前後の年齢層から推定して算出されています。

また、70歳以上の測定値が高齢者施設に入所している全身状態のよいものを対象とした研究が主であったことを考慮して、75歳未満の値も参考にして、75歳以の男性は21.5kcal/kg体重/日、女性は50歳以上を一律に20.7kcal/kgとしました。

参照体重から大きく逸脱した個人または集団に用いる場合に注意を要するものの、日本人の実測定データを最大限に活用している点を評価して、食事摂取基準では、この方法を用いるのが現時点では最良であると判断しています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕