「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から推定エネルギー必要量の算定方法を対象別に紹介します。
〔算定方法〕
◎授乳婦
授乳婦の推定エネルギー必要量は、「推定エネルギー必要量(kcal/日)=妊娠前の推定エネルギー必要量(kcal/日)+授乳婦のエネルギー付加量(kcal/日)」として求められます。
出産直後は、妊娠前より体重が大きく、さらに母乳の合成のために消費するエネルギーが必要であることから基礎代謝量が増加すると考えられていますが、実際には明らかな増加は見られません。
一方、二重標識水法を用いて縦断的に検討した4つの研究のうち1つで身体活動によるエネルギーが有意に減少しており、他の3つでは絶対量が約10%減少しているものの有意な差ではありません。
その結果、授乳期のエネルギー消費量は妊娠前と同様であり、エネルギー消費量の変化という点からは授乳婦に特有なエネルギーの付加量を設定する必要はありません。
一方、エネルギー消費量には、母乳のエネルギー量そのものは含まれないので、授乳婦はその分のエネルギーを摂取する必要があります。
母乳のエネルギー量は、沁乳量を哺乳量(0.78L/日)と同じとみなし、また母乳中のエネルギー含有量を663kcal/Lとすると、「母乳のエネルギー量(kcal/日)=0.78L/日×663kcal/L≒517kcal/日」と計算されます。
一方、分娩(出産)後における体重の減少(体組成の分解)によってエネルギーが得られる分、必要なエネルギー摂取量が減少します。体重減少分のエネルギーを体重1kg当たり6500kcal、体重減少量を0.8kg/月とすると、「体重減少分のエネルギー量(kcal/日)=6500kcal/kg 体重×0.8kg/月÷30日≒173kcal/日」となります。
したがって、正常な妊婦・分娩を経た授乳婦が、授乳期間中に妊娠前と比べて追加的に摂取すべきと考えられるエネルギーを授乳婦のエネルギー付加量とすると、「授乳婦のエネルギー付加量(kcal/日)=母乳のエネルギー量(kcal/日)−体重減少量のエネルギー量(kcal/日)」として求めることができます。
その結果、付加量は517-173=344kcal/日となり、350kcal/日としました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕






