「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から健康の保持と欠乏の回避の「推定平均必要量、推奨量の策定方法」の後半を紹介します。
◎日常食混合たんぱく質における維持必要量
成人を対象として日常食混合たんぱく質も利用効率を実測した研究では、利用効率は平均92.2%と報告されています。そこで、日常食混合たんぱく質の利用効率を90%と見積もっています。
また、1〜9歳の小児における利用効率には、9〜14か月児について検討された結果(1歳児における体重維持の場合の利用効率が70%)を用いています。
体重維持の場合の利用効率は成長に伴い、成人の値(90%)に近づくと考え、それぞれの年齢区分ごとの値を用いています。
これによって、日常食混合たんぱく質における維持必要量は、「(維持必要量g/kg 体重/日)=(良質な動物性たんぱく質における維持必要量)/(日常食混合たんぱく質の利用効率)=0.66÷0.9=0.73(成人の場合)」としています。
なお、たんぱく質維持必要量はkg体重当たりで報告されているため、これに参照体重を乗じて、1人1人当たりのたんぱく質維持必要量としています。
すなわち、〔実効たんぱく質維持必要量(g/日)〕としました。
授乳婦における付加量=〔維持必要量:0.73(g/kg 体重/日)〕×〔参照体重(kg)〕
授乳中は母体から見れば、母乳に含まれるたんぱく質を損失しています。したがって、この分を維持必要量に負荷する必要があります。
母体に付加する必要があるたんぱく質量は、母乳中に含まれるたんぱく質量を、食事性たんぱく質から母乳中のたんぱく質への変換効率で割ったものであると考えて、〔(維持必要量への付加量)=(母乳中のたんぱく質量)/(食事性たんぱく質から母乳中のたんぱく質への変換効率〕としています。
なお、母乳中のたんぱく質量は、0〜5か月児の乳児の基準哺乳量(0.78L/日)に、この期間の母乳中のたんぱく質濃度の平均値(12.6g/L)を乗じて算出しました。
また、食事性たんぱく質から母乳中のたんぱく質への変換効率は、1985年のFAO/WHO/UNUによる報告に基づいて70%としています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕