食事摂取基準79 たんぱく質の機能12

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中からたんぱく質の「耐容上限量の策定方法」を紹介します。

◎耐容上限量の策定方法
たんぱく質の耐容上限量は、たんぱく質の過剰摂取によって生じる健康被害を根拠に設定されなければなりません。最も関連が不快と考えられるのは、腎機能への影響です。

健康な者を対象として、たんぱく質摂取量を変えて腎機能への影響を検討した試験のシステマティック・レビューでは、35%エネルギー未満であれば腎機能を低下させることはないだろうと結論づけています。

また、20%エネルギー以上(または1.5g/kg 体重/日以上または100g/日)の高たんぱく質摂取が腎機能(糸球体濾過率)に与える影響を通常または低たんぱく質摂取(高たんぱく質摂取群よりも5%エネルギー以上低いものとする)と比べたメタ・アナリシスでは、有意な違いは観察されていません。

さらに、たんぱく質摂取量と腎疾患へのリスクをまとめた2023年のアンブレラレビューでは、観察期間が短いなどの課題が残されているものの、高たんぱく質摂取によって腎疾患の発症リスクを高める、という結論には至っていません。

したがって、現時点ではたんぱく質の耐容上限量を設定し得る十分かつ明確な根拠となる報告はないため、耐容上限量は設定しないこととしました。

ただし、レジスタンストレーニング期にある成人におけるたんぱく質の除脂肪量への効果を検証した研究のメタ・アナリシスにおいて、たんぱく質を1.6g/kg 体重/日以上摂取しても除脂肪量の増大への効果は得られない可能性が高いこと、また推奨量以上の摂取により、他の健康指標に対して有益な影響を得られるという根拠が乏しいことが方谷されていることから、上限のないたんぱく質の摂取が健康増進に有益な効果をもたらすわけではない点には注意が必要です。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕