食事摂取基準80 生活習慣病等の発症予防1

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から生活習慣病等の発症予防の「生活習慣病及びフレイルとの関連」を紹介します。

〔生活習慣病及びフレイルとの関連〕
たんぱく質の摂取不足が影響する可能性が高いと考えられる疾患に、高齢者におけるフレイル(frailty)とサルコペニア(sarcopenia)があります。

これまでに報告されている習慣的なたんぱく質摂取量とフレイルの発症率または罹患率との関連を検討した観察疫学研究(横断研究、コホート研究)のメタ・アナリシスにおける結果は一致していません。

一方で、高齢者を対象に、習慣的なたんぱく質摂取量とサルコペニアの罹患率との関連を検討した横断研究のメタ・アナリシスでは、サルコペニアのある群が、サルコペニアのない群に比べて、たんぱく質摂取量が有意に少なかったことを報告しています。

たんぱく質は、他の栄養素に比べて個人間の摂取量の差が比較的小さいため、「量」を評価した研究が策定根拠として重要となります。

しかし、これらのメタ・アナリシスに含まれている文献のたんぱく質摂取量の評価方法は一貫してはいなくて、食事記録法や24時間思い出し法など、摂取した栄養素の「量」を評価できる方法を用いた研究と、集団の中で相対的に習慣的な摂取量が多いか否かを評価できるものの、「量」を特定するには至らない食物摂取頻度調査を用いた研究が混在しています。

そのため、これらの結果のみで、たんぱく質摂取量とフレイル及びサルコペニアとの関連を評価することは難しいことです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕