食事摂取基準92 脂質(脂肪エネルギー比率)4

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から脂質(脂肪エネルギー比率)の健康の保持・増進の「目標量の策定方法」を紹介します。

〔目標量の策定方法〕
*成人・高齢者・小児(目標量)
脂質の目標量の策定に先立ち、飽和脂肪酸の目標量を算定しました。

脂質の目標量は、日本人の代表的な脂質(脂肪酸)摂取量(脂肪酸摂取比率)を考慮して、飽和脂肪酸の目標量の上限を超えないように上限を算定する必要があります。

同時に、脂質は必須脂肪酸を含んでいるため、日本人の代表的な脂質(脂肪酸)摂取量(脂肪酸摂取比率)を考慮して、飽和脂肪酸の目安量を下回らないように下限を算定する必要もあります。

目標量の上限は、日本人の脂質と飽和脂肪酸摂取量の特徴に基づいて、飽和脂肪酸の目標量の上限、7%エネルギーを超えないと期待される脂質摂取量の上限として30%エネルギーとしています。

目標量の下限は、次のように算定されています。

日本人のn–6系脂肪酸とn–3系脂肪酸摂取量の中央値(目安量)が、それぞれ4〜5%エネルギー、約1%エネルギー、一価飽和脂肪酸摂取量の中央値が少なくとも6%エネルギーであり、脂肪酸合計では18〜19%エネルギーとなります。

さらに、トリアシルグリセロールやリン脂質には脂肪酸の他にグリセロールの部分があり、脂質全体の約10%を占めています。

グリセロール部分を考慮した場合、脂肪エネルギー比率は、20(=18÷0.9)〜21%エネルギー(≒19÷0.9)となり、これを丸め処理を行って20%エネルギーとしています。

*妊婦・授乳婦(目標量)
生活習慣病の発症予防の観点から見て、妊婦と授乳婦が同年齢の非妊娠・非授乳中の女性と異なる量の総脂質を摂取すべきとするエビデンスは見出せていません。

したがって、目標量は非妊娠・非授乳中の女性と同じとされています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕