食事摂取基準95 飽和脂肪酸3

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から飽和脂肪酸の健康の保持・増進の「生活習慣病の発症予防」の後半を紹介します。

〔生活習慣病の発症予防〕
◎生活習慣病との関連(後半)
期間が2年以上の介入研究のメタ・アナリシスでは、飽和脂肪酸摂取量を減少させると循環器疾患死亡率の有意な低下は認めなかったものの、循環器疾患発症リスクの減少を認めました。

飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸に置き換えた場合、コホート研究で検討した結果を統合したメタ・アナリシスでは、冠動脈性心疾患発症率の有意な減少を報告しています。

さらに、介入研究を統合したメタ・アナリシスで、飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸に置き換えた場合、循環器疾患発症率の有意な減少が観察されています。

一方で、コホート研究のメタ・アナリシスによると、飽和脂肪酸の摂取量と脳出血と脳梗塞の発症リスクは負の関連を認めましたが、感度解析の結果から、地域によって結果にばらつきがある可能性が示唆されています。

小児では、生活習慣病の発症や死亡との関連から、飽和脂肪酸摂取について検討するのは適切ではありません。ただし、メタ・アナリシスによると、小児でも飽和脂肪酸摂取量を減少させると血中総コレステロールとLDLコレステロールが有意に低下することが認められています。

以上より、循環器疾患の発症と死亡に直結する影響は十分ではないものの、その重要な危険因子の1つである血中総コレステロールとLDLコレステロールへの影響は成人、小児ともに明らかであり、飽和脂肪酸については目標量を設定すべきであると考えられます。

しかしながら、両者の間に明確な閾値の存在を示した研究は乏しく、飽和脂肪酸摂取量をどの程度に留めるのが好ましいかを決める科学的根拠は十分ではありません。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕