日々修行241 広報としての講習

20代の半ばから60代の最後まで、ずっと続けてきたことがあるのかと問われると、「書くこと」だと答えるようにしていますが、その多くは文筆家といった仕事よりも、団体の広報活動が中心でした。

大学4年生のときにアルバイトとして手がけたのは厨房機器業界の月刊機関誌で、これは広報活動でした。初めは編集の手伝いだったところから、厨房機器と設備に関する資格認定が業界内で始まり、その制度づくりにも参加するようになり、講習の教科書づくり、講習と認定作業にも加わりました。

そこから病院調理師の団体、病院栄養士の団体、臨床栄養の団体、産業栄養の団体、病院給食の委託会社の団体などの立ち上げも広報がセットでした。

団体の立ち上げには参加しなかったものの、専門調理師団体の講習、巡回健診団体の教育と広報といったように広報と講習がセットになっていましたが、だんだんと講習のほうが多くなり、私が代表のNPO法人は講習が中心で、これが広報活動にもなっているという感じでした。

こういった流れもあって、広報と講習の重要性を訴えると、広告と勘違いされて初めから拒否されることがあります。

これは広告と広報の根本的な違いが理解されていないからですが、そこを理解してもらうために英語の表現を伝えることがあります。

多くの方々に知ってもらうための活動である“広報”は英語では「Public Relations」と記されます。

「Public Relations」は世界で通じる用語ですが、これを略したPRとなると違った意味合いで捉えられることもあります。それはPRと広告が混同されている場面が増えているからです。

「Public Relations」は、団体と、その団体を取り巻く人との望ましい関係を作り出す行動が原点となっています。この場合の団体は企業、官公庁などのほかに、公益活動に取り組む法人も含まれています。活動を知ってもらい、関心のある人に注目してもらうことが役目で、そのためには費用もかかります。

“広告”は英語では「advertisement」と記されます。広告費をかけて知らせる行動であるので、広告費の多寡が結果や収益に関わることになります。

できるだけ費用をかけずに広報を有効に進めるためには、同じ目的をもって集まった方々が、それぞれの広報力を結集させることが重要で、業界団体などは、これを担っています。商品やサービスを販売することが最終的な目的であっても、広報活動は最低限の金銭の動きしか想定していません。

広告は全体のパイ(収益)を分け合う活動とも言えますが、少ないパイを分け合う、パイを奪い合うという発想から、パイを増やす、パイを拡げるという発想への転換が広報です。

パイを奪うことに気を取られるのではなく、パイを増やす工夫と努力をしなければ、シェアを拡大させたとしても、実際に手にすることができるパイが少なくなっていたことに、後になって気づくことにもなりかねないのです。

こういう考えも、講習を通じて伝えさせてもらっています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕