日々修行261 分掌と調整役のシステム

同じ読み方をする言葉なのに漢字にすると別の字になって、意味も違っている同音異議語が数多く存在しているのは漢字文化圏に特有のことで、中でも日本語は意味を間違えたために問題が起こりやすい特徴があります。

パソコンの文字変換で、よく出てくる言葉なら間違って使っているというのはイメージもしやすく、トラブル回避もしやすいのですが、「ぶんしょう」の変換ミスで迷惑を被ったことがあります。

それは「分掌」という言葉で、その意味合いについて説明していたのに、聞いている人は文章のことかと早とちりして、単なる勘違いで済まずに、組織そのものを狂わせることになったという例もあります。

その反省から、企画などの文献には「文章とは」という、知っている人にとっては「何を今さら」と思うようなことを、わざわざ示してから説明を始めるようになりました。

分掌を実践として把握したのは、かつての自衛隊の管理体制でした。“かつての”ということは、今は違っているということを言いたくて使っているわけですが、現在は日本独特の分掌とは違った体制となっているからです。

その、かつての管理体制(分掌管理)について書いておこうと思ったのは、分掌管理の方法が組織運営に必要なところが身近でも増えてきたと感じているからです。

かつての自衛隊の管理体制は、シビリアンコントロールとしての文民(大臣)の下に統合幕僚会議議長がいて、統合幕僚会議は3自衛隊(陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊)の調整機関でした。

統合幕僚会議議長は自衛官の最高位にあったものの、権限は大きくはなくて、各幕僚長(陸上幕僚長、海上幕僚長、航空幕僚長)と対等で、指揮命令権もないという、あくまで合議制の議長の役割でした。

このことを教えてもらったのは、第22代統合幕僚会議議長であった海将で、巡り会ったのは海上自衛隊のOB会(かつては海軍のOB会)の水交会の所在地であった東京・原宿の東郷神社でした。2000年のことだったと記憶しています。

2006年の制度改正によって統合幕僚会議議長は統合幕僚長に変更になりました。2025年3月にはアメリカ軍と同様の組織体制とすることになり、防衛大臣と3自衛隊の間間に統合作戦司令官が設けられて、統合幕僚長は防衛大臣と統合作戦司令官の調整役に変更されました。

各幕僚長は、それぞれの組織を業務分掌して、その中での役務と権限を持って行動をしています。それは過去も今も変わってはいないのですが、それぞれが合致して、同じ方向で仕事を続けていくことができるように調整する役割がトップと実務の間に位置していく立場です。

これは、多くの組織にとっても必要なポジションであり、個性が強い人の集まりであるほど、調整役が重要になっていくことを、組織論、経営論の解説の場面で紹介させてもらっています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕