私たちの腸の中には、1000種類以上、約1000兆個もの腸内細菌が棲みついています。以前は100種類以上、100兆個以上、その後は300種類以上、300兆個という数字があげられていたことがありますが、どちらにしても私たちの全身の細胞の数の約60兆個を超えているのは間違いありません。
これらの腸内細菌は善玉菌、悪玉菌、そして腸内の環境によって善玉菌にも悪玉菌にも変化する日和見菌に分けることができます。
善玉菌はビフィズス菌や乳酸桿菌などの乳酸菌類が代表的なものです。悪玉菌はウェルシュ菌や大腸菌、腸球菌、赤痢菌など数多くの種類があります。
腸内細菌の総量はほぼ決まっていて、善玉菌が増えると悪玉菌が減り、逆に悪玉菌が増えると善玉菌が減っていきます。
善玉菌は発酵を進めて腸内を酸性傾向にしていきますが、悪玉菌は酸性の環境に弱く、アルカリ性の環境に強いので減っていくわけです。逆に悪玉菌が増えてアルカリ性の環境に傾くと善玉菌が減っていきます。
善玉菌が増えて酸性の環境になると、日和見菌も善玉菌に変化していき、悪玉菌が減るので、どんどん善玉菌が優位になっていきます。逆に、悪玉菌が増えてアルカリ性の環境になると、日和見菌も悪玉菌に変化していき、善玉菌が減るので、どんどん悪玉菌が優位になっていくというわけです。
腸内細菌の割合は、腸内環境によって異なるものの、一般には善玉菌が約20%、悪玉菌が約10%、日和見菌が約70%とされています。日和見菌のほうが数は多いので、腸内環境を酸性傾向に保っておくことで、善玉菌側が大多数を占めることができるということがわかります。
自分の腸の中は善玉菌が多いのか、それとも悪玉菌が多いのか気になるところですが、それはトイレで簡単に確認することができます。
善玉菌が多い人は腸内での発酵が進むために、便の色は黄色くなり、臭いも弱くなります。また、便の量も増えて、便も軟らかくなっていきます。赤ちゃんのウンチが黄色で、臭くないのは善玉菌が大半を占めているからです。
それに対して悪玉菌は腸内での腐敗を進め、アンモニアや硫化水素、スカトール、インドールといった有害物質を多く作り出します。便の色が黒く、臭いが強く、便の量も少なく、便が固くなるのは悪玉菌が多くなった証拠と言えます。悪玉菌が多いと便秘や下痢を起こしやすくもなります。
善玉菌も悪玉菌も菌としての活動は同じです。エサを食べ、代謝を行い、代謝物を排出しています。その代謝物が健康に役立つもの、つまり発酵が進みやすい酸性物質を作り出しているものを善玉菌と呼び、有害物質を作り出しているものを悪玉菌と呼んでいます。
赤ちゃんの腸内には善玉菌が多くなっていますが、離乳期を過ぎると悪玉菌が増えていきます。とくに増えるのは悪玉菌の代表であるウェルシュ菌で、これは中高年から老年にかけて、どんどんと増えていきます。
その一方で、善玉菌の代表であるビフィズス菌は減っていって、悪玉菌が優勢になってしまいます。その理由としては、加齢による腸内の酸性の低下が大きいからだと考えられています。
若いときには胃液と十二指腸での腸液の分泌が盛んですが、年齢につれて徐々に分泌量が減っていきます。胃液と腸液は強酸性で、分泌量が多いと、その酸性度を引きずって胃と腸の中は酸性に保たれています。善玉菌は酸性の環境に強く、悪玉菌は酸性では活動が弱まります。
腸液は小腸下部では薄まっていくので、そこから大腸にかけては悪玉菌が増殖するようになっています。日和見菌が善玉菌となるのは腸内が酸性に傾いているときで、悪玉菌になるのはアルカリ性に傾いているときなので、善玉菌が増える環境は、さらに善玉菌を増やすことになるのです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕