食塩の摂取量が減ってきているのに、高血圧の人が増えていることをあげて、「減塩は意味がない」と発言する人が増えてきました。
食塩が多く含まれる料理は、おいしさを感じやすいとされることがあり、塩分が強い料理は“ご飯が進む”ということもあって、多くの量を食べてほしいときには、わざわざ塩分を濃くするということが行われます。
その一方で、塩分の強い食事をしていると、味覚が鈍ってくるということも指摘されています。そのこともあって、味覚を正常に保つための方法として、減塩の食事のアイデア、ポイントが求められることがあります。
おいしく食べながら、食欲を低下させなくして、栄養摂取も的確に保つための方法として、よく話をさせてもらうことを以下に紹介させてもらいます。
食塩を減らしても野菜や魚類などから摂った出汁(だし)が多ければ、汁物や煮物などは薄味になってもおいしく食べられるようになります。また、塩分を減らした代わりに、他の味でカバーすることができます。
これは高血圧の食事療法にも使われている手法で、出汁は鰹節、昆布、干し椎茸、煮干の旨味成分を活用することでコクのある味わいにできます。食塩を減らしても「減塩でないものはおいしい」と騙される(勘違いさせられる)人も多くいます。
もちろん食材の持ち味(食品本来の味)で食べるようにすると余計な調味料がいらなくなります。できるだけ旬のもの、鮮度のよいものを選ぶことも大切です。
酸味を活かすのも効果があり、酸味を塩味の代わりにすることができます。ゆず、レモン、夏みかんなどの柑橘類や梅干し、ヨーグルトなどを利用すると和え物、サラダ、焼き物などは食塩なしでもおいしく食べられます。
ただし、梅干しは重量の20%ほども塩分が含まれているので、少なめの量にしておくことがすすめられます。
酢も上手に使える調味料です。ごま油、大豆油、バターなどを使って炒め物、揚げ物、ムニエルなどを作り、これに酢を加えることで濃厚な感じの味になり、食塩を減らすことができます。
香ばしさや香りも有効な方法で、肉や魚などを少量の醤油と砂糖を使って、ほどよく焼くと香ばしさが出ます。焦げた味は不快ですが、少しだけ焦げた味は香ばしさにつながります。
しそ、しょうが、ねぎなどの香りを活かすと味が引き締まって、おいしさが増します。
煮物や漬物は塩味が食材に染み込むために塩分量が多くなりがちです。塩味は舌の表面で感じることから、塩や醤油は振りかけたり、食品につけて食べることで全体の塩分は少なくても塩味を強く感じることができます。
塩分の感じ方は温度にも影響されます。揚げ物、焼き物、蒸し物は熱いうちに食べることで、薄味でもおいしく食べることができます。また、サラダ、冷や奴などは冷たいうちに食べると、薄味でもおいしく食べることができます。
このような工夫をしないまま、減塩はおいしくないというのは、どうなのか、という話をさせてもらっています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕