諺もじり5「オンをオフで返す」

よかれと思ってやったことなのに迷惑がられるのは誰しも経験していることかと思います。よかれは、良かれとも善かれとも書かれるのですが、自分たちとしては“善かれ”を使うようにしています。

その善かれと思ってやったこと、それも押しつけでもなく、感謝を期待してのことでもないのに、無視されるならまだしも、“悪しかれ”で返されることもあります。

そんな経験を資格認定講習の場で話すときに、よく使っているのが「オンをオフで返す」という諺(ことわざ)をもじった言葉です。もちろん、元の諺は「恩を仇で返す」で、仇は“かたき”ではなくて“あだ”です。

恩をオン(on)にして、その対義語のオフ(off)を合わせて作った言葉ですが、講習で使ったときの反応は、そこそこです。

しかし、その意味するところを話すと、ほとんどの方に理解してもらえます。そして、私たちの講習が目指しているところもわかってもらえます。

その意味するところというのは、私たちが恩を受けたオンをオフで返すという恩知らずの行為ではなくて、講習で知識を伝えるようにスイッチをオンにしたことが伝わらないとオフで返されることがあるということです。

聞いている方のことを思い、しっかりと伝わるように話さないで、講習テキストに沿った話をするだけだと、受け入れてもらえないことがある、ということを話しています。

というのは、私たちの講習は初級、中級、上級の3段階方式を採用していて、学んだ方が次の機会には教える立場となっていく教育システムだからです。

初級、中級と学んでいくときにも、自分が中級となって教えるときのことを考えて、しっかりと理解することが大切で、理解できていないところがあるまま放置しておいたら、教える立場になったときに充分に伝わらなくて、オンをオフで返されるようなことにもなりかねない、ということが伝わるように話をしているのです。

また、「恩を仇で返す」をもじった「オンをオフで返す」は、つまらないと感じさせるような話をしたときに聞いている方からの反応を表しています。

資格認定講習で話したことに質問があったときに、それを無視するように講習テキストに沿った話を続けるようなことも「オンをオフで返す」態度となってしまうのですが、そんなことでは受講者からも「オンをオフで返す」というリアクションなしの面白くない講習にもなりかねません。

コロナ禍から始まったオンライン講習から経験したのは、しっかりと理解してもらい、それを活かしてもらうためには、テニスや卓球のようなラリーの応酬が必要だということです。

どうしても画面越しの対面では、表情が見えず、表情の裏の思いや意図が伝わらずに、頑張って講習をした割には、頑張って受講した割には「オンをオフで返す」ような結果となってしまいかねません。

そんなことを避けるために、資格認定講習では「ギブアンドギブ」ということも話しています。これは「ギブアンドテイク」(give and take)のテイク(相手から得る利益)ではなくて、相手に利益を与えるギブに変えています。ギブにギブを重ねて、それで当たり前という感覚で、1回のギブで1回のテイクを求めるのは、教える側としては欲張りすぎという感覚です。

give and giveどころか、give and give and giveでも、さらにgiveを重ねてもよいくらいです。つまり、give and give and give and giveと利益を与えて、その重要性に気づいてもらえればよいとの考え方をしています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕