さまざまな事情があって、幅広い範囲のことを学べない人に対して、学ぶ範囲を狭めて、場合によっては極めて狭い範囲の中でも学ぶ段階を低くして対応することがあります。
その一つの例として、発達障害によって学習に困難さを抱える子どもに対して、生活に役立つこと、生きていくために必要なことを教えることについて、その内容が検討されています。
発達障害がある人は、現れる状態は千差万別で、その対応も千差万別でなければ的確な対応ができないことは随分と知られるようになってきました。
しかし、学習支援は、対象者が多くなればなるほど個別の対応が難しくなります。
どうしても共通した教え方、集団での教え方になりがちです。教えていること自体は個人対応であったとしても、教え方の全体的な仕組みが一定であると、初めから限界を作ってしまうことにもなります。
小学生の場合には、発達障害があると2学年を下げた学習内容になることが多くなっています。小学3年生では1年生、5年生の場合では3年生の理解レベルということです。
これは文部科学省の学習レベルに対しての話であって、学ぶべきことは教室での内容に限定されたものではありません。
コミュニケーション力と対応力に困難さがある子どもは、生活面で常識とされることが身につかず、それが社会生活で問題を起こすことにもなっています。
道路標識の意味がわからなければ、それに従った行動が難しくなることもあります。交通事故の危険性が高まることは普通に想像されることです。安全性の基礎知識がないと生活環境が変わったときに、危険に晒されることにもなります。
電磁調理器の家庭で育った子どもが、火が熱いものだという認識がないために、火に手を近づけて火傷をするという例も少なくありません。
「せめて自分で生きていくことができる知識は身につけさせたい」という声は発達障害児支援施設の指導員などから聞かれることが多いのですが、そういったことが理解できるだけの学習でよいのか、そこは学びの伴歩をしていくときには、考えておかなければならないことです。
〔セカンドステージ連盟 理事長:小林正人〕