食事摂取基準41 エネルギー・栄養素2

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から、エネルギーの基本的事項を紹介します。

◎基本的事項
生体が外界から摂取するエネルギーは、生命機能の維持や身体活動に利用され、その多くは最終的に熱として身体から放出されます。このため、エネルギー摂取量、エネルギー消費量、身体への蓄積量は、これと等しい熱量として表示されます。

国際単位系におけるエネルギーの単位はジュール(j)ですが、栄養学ではカロリー(cal)が用いられることが多くなっています。1Jは非常に小さい単位であるため、kJ(またはMJ)、kcalを用いることが実際的であり、ここでは後者を用いています。

kcalからkJへの換算は、国際連合食糧農業機関・世界保健機関(FAO/WHO)合同特別専門委員会報告に従い、1kcal=4.184kJとしています。

エネルギー摂取量は、食品に含まれる脂質、たんぱく質、炭水化物、アルコールのそれぞれについて、エネルギー換算係数(各成分1g当たりの利用エネルギー量)を用いて算定したものの和です。

一方、エネルギー消費量は、基礎代謝、食後の熱産生、身体活動の3つによるものと分類されます。身体活動は、さらに運動(体力向上を目的に意図的に行うもの)、日常の生活活動、自発的活動(姿勢の保持や筋トーヌスの維持など)の3つに分けられます。

エネルギー収支バランスは、「エネルギー摂取量 – エネルギー消費量」として定義されます。成人においては、その結果が体重と体組成の変化であり、エネルギー摂取量がエネルギー消費量を上回る状態(正のエネルギー収支バランス)が続けば体重は増加し、逆に、エネルギー消費量がエネルギー摂取量を上回る状態(負のエネルギー収支バランス)では体重が減少します。

したがって、短期的なエネルギー収支のアンバランスは、体重や体組成の変化で評価することは可能です。

一方、エネルギー収支のアンバランスは、長期的にはエネルギー摂取量、エネルギー消費量、体重が互いに連動することで調整されます。

例えば、長期にわたってエネルギー制限を続けると、体重減少に伴ってエネルギー消費量やエネルギー摂取量が変化して、体重減少は一定量で頭打ちとなり、エネルギー収支バランスがゼロになる新たな状態に移行します。

多くの成人では、長期間にわたって体重・体組成は比較的一定で、エネルギー収支バランスがほぼゼロに保たれた状態にあります。肥満者もやせの者も、体重、体組成に変化がなければ、エネルギー摂取量とエネルギー消費量は等しくなります。

したがって、健康の保持・増進、生活習慣病予防の観点からは、エネルギー摂取量が必要量を過不足なく充足するだけでは不十分であり、望ましい体格(body mass index:BMI)を維持するエネルギー摂取量(=エネルギー消費量)であることが重要となります。そのため、エネルギーの摂取量と消費量のバランスの維持を示す指標としてBMIを採用しています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕