肝機能の基礎知識4 アルコール性肝障害

アルコールによって起こる肝臓の病気を総称してアルコール性肝障害といい、症状の程度によって脂肪肝、肝線維症、肝炎、肝硬変に分けられています。

アルコール飲料を習慣的に多量に飲む人は、初期段階ではアルコール性脂肪肝になりやすい傾向があります。アルコールによって肝臓での中性脂肪の合成が増加して、脂質代謝が阻害されるために、肝臓に脂肪がたまっていきます。

通常は肝臓には3~5%の脂肪が含まれていますが、5%を超えると脂肪肝とされ、中には30%を超えている例もあります。

脂肪が蓄積した肝細胞は正常に機能しなくなるために、肝臓の機能だけでなく、全身の機能にも影響が出るようになります。

脂肪肝の状態から、さらに飲酒を続けていると、肝細胞の周囲に線維が増加していくアルコール性肝線維症になります。食事を摂らずに大量のアルコールを摂取したときや飲酒量が急に増加したときには、アルコール性肝炎へと進み、ウイルス性肝炎と似た強い肝障害を起こし、急速に肝硬変に進行していきます。

そして、アルコール性肝線維症やアルコール性肝炎がさらに進行すると、肝臓の線維化が進み、肝細胞は減少して、肝臓が硬く小さくなり、アルコール性肝硬変になります。

肝硬変の段階になると、肝臓の機能は著しく低下していきます。そのため、タンパク質合成の働きの低下による浮腫(むくみ)・腹水、アンモニアの解毒作用の低下による肝性脳症、肝臓の線維化により血流が阻害されて起こる食道静脈瘤や痔など、さまざまな症状が表れます。肝性脳症や食道静脈瘤が破裂すると、死にいたる危険もあります。

アルコール性肝障害の危険度は、それまでに飲んだアルコールの総量に比例する傾向があります。肝臓が障害を受けるアルコール量の目安として、日本酒換算で毎日3合以上のアルコールを5年以上飲んでいる常習飲酒者は脂肪肝、肝線維症を発症するケースが多く、毎日5合以上のアルコールを10年以上飲んでいる大酒者は肝硬変の危険性が高いといわれています。

また、1日に飲む酒量は少ない場合であっても、これまでに飲んだアルコール量(積算飲酒量)が500kgを超えると、肝硬変の危険性が高まります。日本酒に換算して3合を毎日飲んでいると20年間で、1日5合なら12年間でアルコール量が500kgとなります。

1日1合であれば50年間でも500kgには達しません。ただし、アルコール性肝障害の進展は個人差が大きいため、酒量が多くないからといって油断はできません。

また、女性は男性よりも肝臓が小さく、加齢によって重量が小さくなりやすく、肝機能も低下しやすいため、女性は男性よりも早く肝障害が進むといわれています。女性は男性の半分の酒量でも肝硬変になる可能性があるため、少量でも習慣的に飲酒している場合には肝機能の数値に注意する必要があります。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕