現在は公益社団法人として活動しているメディカルフードサービスの委託会社の全国団体が社団法人としての発足を目指しているときに、当時の厚生省の紹介で広報担当として出向いたときの、随分と古い話を引き合いに出すのは、そこで広報戦略の“深淵”を覗かせてもらったことが今もつながっているからです。
それは1989年の1月のことで、昭和から平成に変わった直後のことでした。当時の私は33歳でした。
病院は医療に集中するために、食事の提供は委託会社を利用する傾向が強まっていました。基準寝具のトップメーカーが基準給食の世界に参入したこともあって、この社団法人が設立されることによって、業界を上げて病院への営業がしやすくなるというメリットが期待されました。
私は厚生省から、あくまで広報の手伝いを仰せつかっていただけですが、役員には厚生省から広報担当理事として送り込まれた方がいました。
広報といっても重要になるのは質の向上であり、基準給食を担う栄養士・管理栄養士に的確な情報を送り続けることが命題でした。内容としては治療食、サービス、衛生、安全といったことで、私が以前に病院調理の厨房の広報を務めていたことで役目が回ってきました。
会員企業に所属する栄養士・管理栄養士は増え続けて2万人を超えていますが、各人に毎月情報を届けるためにアナログの発信(情報誌の発送)をしていました。
その費用は仮に1000円とすると1年で1万2000円、それが2万人となると年間で2億4000万円の計算になります。この費用は会員企業が支払うので、栄養士・管理栄養士の負担はないというのが大原則となります。
この中から原稿作成、編集、印刷、発送の費用を差し引くと多くは残らないのですが、それでも実施する意味はありました。というのは、1995年からインターネットの世界が大きく変わることは事前にわかっていて、初めのうちは情報を見てもらうところから、徐々に個人に情報を発信できるようになり、最終的には手のひら(スマホ)で個々に対応できる世の中になることもわかっていたからです。
情報発信の費用は、デジタルになると編集段階では多くかかっても、印刷費と送料が必要なくなることから、残る金額が多くなります。これを内容の充実にあてて質を向上させることは公益の法人としては当然の役目ということになります。
会員企業が支払うということで、デジタル時代になっても情報発信の費用は変わらず、これを“権利”(利権?)として、次に引き継いでいくメリットは大きいものがありました。
実際の金額については明らかにすることはできませんが、情報を受け取る人数が多くて、そのための費用を個人ではなくて会員が支払い、会員もメリットを得るということは、広報戦略を考えるときのキーポイントとなっています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕