業苦楽28 こだわりの仕事場

別荘を持つ理由は人によって違っていますが、よく聞くのは「別荘があると仕事にプラスになる」ということです。

それは仕事をする場所として他に邪魔されることがない(少ない)別荘は、集中して取り組める場所であることは間違いなくて、気分転換の場所があることも大事だという人も少なくありません。

ある作家というか文筆家が、別荘では仕事が捗る(はかどる)ということで、原稿を書くときには東京の仕事場(兼自宅)から伊豆半島の別荘に自らハンドルを握って頻繁に出かけていました。

仕事が捗るという理由だったはずが、「別荘にいる間なら大忙しで話をする暇もない、ということはないだろう」と考える人がいて、それも1人や2人ではなくて、かえって別荘にいる1週間ほどは仕事が進まなかったということを話していました。

文筆の仕事は、いつまでも安定して続くことはなくて、文筆量が減ったときには邪魔な存在にもなりました。別荘に一緒に行って、食事や家事をする家族(主に奥さん)の仕事量が増えていたこともありました。

それでも「別荘でないと仕事が進まない」と言って、家族から手放すことを求められたときにも、これを拒否していました。その家族から助けを求められて、私が話したのは「別荘は必要なのは事実でも、この別荘ですか」ということでした。

もっと近くて、時間も費用もかからず、継続できる別荘をすすめたのですが、別の物件を探すのに時間がかかり、そのうちに文筆よりも講演の時間が増えていくようになりました。

実際には自然に増えたということではなくて、もしも東京と別荘の移動中に交通事故でも起こしたら、他に代わりがいないから大きな損失になると複数のメディア関係者と話をして、少し原稿の依頼を減らすように仕掛けて、代わりに講演の依頼を増やすように動きていたというのが実際にところです。

その結果ですが、文では伝わらなかったことが講演で直接話をすることから伝わるようになった、講演に参加していた方の依頼でテレビ番組の出演が増えた、そして顔と名前が広く知られるようになって出版物の販売数も増えたという好循環となりました。

このことを自業による苦(じごく)を経験したことが、業苦楽(ごくらく)につながった例の一つとして話をさせてもらっています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕