日々修行290 栄養学の変遷その2

日本の栄養学の歴史は、公衆栄養学、人間栄養学、予防栄養学、発達栄養学と変遷してきましたが、2008年から始まったメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に対応する特定健診・特定保健指導による栄養指導は、人間栄養学のスタート地点とも呼ばれる出来事でした。

それ以降、ずっと栄養学の研究と情報発信の極めて近いところにいて、発達栄養学の始まりから今まで、ずっと歩んできました。その中でも発達栄養学は着目されているのが食品というよりも食品のエネルギーであることから、まだ社会的な理解は充分ではないと感じています。

栄養学を学ぶことができる大学でも、発達栄養学を冠した学部・学科も増えてきました。発達栄養学という名称に相応しい講義が実施されている大学がある一方で、以前と大きく変わらない内容のままという大学も少なからずあります。

個々の成長や発達に必要な栄養素を摂取するのは当然のこととしても、その栄養素の意味合いとしてエネルギー代謝の向上を掲げているのが発達栄養学の、これまでとは違った考え方となっています。

エネルギー代謝が特に注目されるようになったのも、メタボリックシンドローム対策として栄養の過剰摂取を抑えると同時に、運動によるエネルギー消費を高めることが重視されるようになってきたタイミングでした。

メタボリックシンドロームは「内臓脂肪症候群」と訳されて、内臓脂肪の過剰な蓄積が血管の健康に関わる血圧、血糖値、中性脂肪値などに影響を与えることが強調されました。

メタボリック(metabolic)は代謝を意味します。シンドロームは症候群と訳され、原因不明ながら共通の病態を示すことを指しています。シンドローム(syndrome)の原義は同時進行で、メタボリックシンドロームでは何が同時進行で起こっているのかというと、それは代謝機能の低下です。

メタボリックシンドロームが「代謝機能低下症候群」だとすると、エネルギー代謝を高めることこそが余分な内臓脂肪を減らし、血管の健康を守ることにつながります。

エネルギー代謝はエネルギー源(糖質、脂質、たんぱく質)を効率よくエネルギー化させることで、そのエネルギー代謝が行われるのは全身の細胞の中にあるミトコンドリアです。

ミトコンドリアにエネルギー源が効率よく取り込まれて、多くのエネルギーを発生させるためには、ビタミンCを除くすべての水溶性ビタミンが必要になります。

一般にエネルギー代謝に必要とされるビタミンB群やミネラル(マグネシウム、亜鉛など)を補うだけでは不十分だということです。

2008年のメタボリックシンドローム対策が始まる前に、代謝促進成分が医薬品から食品成分として厚生労働省から許可されるということがあり、これがエネルギー代謝科学への関心を高めることになりました。その一つが、私たちが今も研究し続けているL–カルニチンです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕