食事摂取基準53 エネルギー必要量の推定方法1

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中からエネルギー必要量の推定方法の食事調査を紹介します。

〔食事調査〕
体重が一定の場合は、理論的には、「エネルギー摂取量=エネルギー必要量」となります。したがって、理論的にはエネルギー摂取量を測定すればエネルギー必要量が推定できます。

しかし、特殊な条件下を除けば、エネルギー摂取量を正確に測定することは、申告誤差(特に過小申告)と日間変動という2つの問題が存在するために極めて困難です。

過小申告は系統誤差の一種であり、集団平均値など集団の代表値を得たい場合に特に大きな問題となります。

原因は多岐に渡りますが、食事記録法、質問紙法を含むほとんどすべての食事調査法において、無視できない系統的な過小申告が認められています。

二重標識水法によるエネルギー消費量の測定と同時期に食事調査を行った100の研究では、第三者が摂取量を観察した場合を除き、通常のエネルギー摂取量を反映するエネルギー消費量に対して、食事調査によって得られたエネルギー摂取量は総じて小さく、かつ、BMIが大きくなるにつれて過小評価の程度は甚だしくなっていました。

一方、日間変動は偶然誤差の性格が強く、一定数以上の対象者を確保できれば、集団平均値への影響は事実上無視することができます。ただし、標準偏差など、分布の幅に影響を与えるために注意を要します。

また、個人の摂取量についても、長期間の摂取量を調査できれば、偶然誤差の影響は小さくなり、その結果、習慣的な摂取量を知ることはできます。

しかし、日本人成人を対象とした研究によると、個人の習慣的な摂取量の±5%以内(エネルギー摂取量が2000kcal/日の場合は、1900〜2100kcal/日となる)の範囲に観察値の95%信頼区間を収めるために必要な調査日数は52〜69日間と報告されています。

これほど長期間の食事調査は事実上、極めて困難です。

以上の理由により、食事調査によって得られるエネルギー摂取量を真のエネルギー摂取量と考えるのは困難です。そのため、食事調査によって得られるエネルギー摂取量を実務に用いる場合には、この問題を熟知して、正しく対処することが必要です。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕