長生きになった分だけ、世の中のために時間を使ってもらえないか、という考えは総論としては“あり”と考えても、実際に自分の立場で何ができるのかという各論になると“なし”とする人が多くいます。
日本人が長生きになったのは事実であって、どこと比べるかということで数字は変わってきますが、大きく遡って終戦後の初めての調査結果(1947年)をみると、男性の平均寿命は30年、女性は35年ほども長生きになっています。
30年といえば一世代分の長さ(現在の初産年齢は31歳)で、これだけの期間があれば自分の子どもや孫に時間を費やすだけでなくて、地域の子どもたちのためにも役立ててもらえないか、というのは一応は説得力があります。
“一応は”と書いたのは、健康寿命を計算に入れていないからです。健康寿命は医療と介護の世話になりっぱなしになるのではなくて自由に動くことができる年齢を指しています。
その期間は平均寿命を基準とすると、男性で約9年、女性で約12年も短くなっています。この分を差し引くと、それほど長い期間ではないと言われても仕方がないことです。
これに対してプラスのデータもあって、日本老年学会と日本老年医学会は、現在の高齢者は20年前に比べて10歳は若返っているという結果を発表しています。
長生きになっただけでなく、長く元気に暮らすことができるようになった高齢者が増えているだけに、続く若い世代に、子どもや孫の世代に、そして地域のために10年分の“お裾分け”をしてもらえないか、ということを話しています。
ただ、元気になろうとしても価格高騰で食べるものが足りない、給料も年金も物価上昇に比べると実質は下がっているという時代に、お裾分けを望むことは難しい時代ではあることも認識しての発言です。
〔セカンドステージ連盟 理事長:小林正人〕