日々修行313 夏場の栄養不足

夏に栄養不足になるというと、暑さのために食欲が湧かない、あっさりとした低エネルギーのものを食べることが多いといったことが思い浮かべられることが多いかと思います。

中には経済的な厳しさ、暑さ(猛暑)対策に冷房費がかかる分だけ食費を減らさないといけないということもあるのは、自分のことを考えてもわかっていることですが、今回のお題の「夏場の栄養不足」は、これとは違った観点で書いています。それは重要な栄養源である野菜や卵の栄養値が夏場には特に低下しているということです。

“特に”と書いたのは、野菜について言えば、品種改良のたびに栄養素(ビタミン、ミネラル)が低下するということは起こっていました。その例の一つとして以前(日々修行301)に、ほうれん草がアク抜きをせずにサラダでも食べられるようになったと紹介しましたが、可食部100gあたりのビタミンCは1947年(戦後初)の食品成分表では150mgでした。そこから改訂版が出るたびに低下して、今では平均で35mgに低下しました。

これは年間を通じた平均値であって、冬場は60mgであるのに対して夏場は20mgにも低下しています。

他の野菜についても、食べやすい、形がよい、色がよい、育てやすい、収量が多い、種が少ない(もしくは種がない)という売りやすく、食べやすい野菜が増えていきました。これは品種改良の成果とされていますが、それと引き換えに生じたのは種(種子)の多くがF1種(一代雑種)になったことです。

F1種については以前(日々修行301、日々修行302)に紹介しています。

繰り返しにはなりますが、F1種は異なる品種を交配して新たな品種を作り出す品種改良法で、狙いどおりの品種を作り出すことはできても、自家採種ができないというデメリットがあります。

日本国内で野菜栽培に使われている種は、国産というイメージがあるかもしれませんが、その割合は徐々に増えていって、今では野菜の種の90%は輸入されていて、国内産は10%ほどです。

日本の種苗会社(サカタのタネ、カネコ種苗、タキイ種苗)は、国内だけでなく海外にも多く販売しています。日本の野菜の種は優良で、これを輸入して、育てやすく、収量が多くて、おいしい野菜を育てようという国は世界に及んでいます。

しかし、種を育てる環境という点では日本は劣っています。気候変動が続く日本では一定の水準に保つことが難しいという状況にあります。
日本は国土が狭い、さらに育成面積が狭い、狭さのために交雑しやすいということに加えて、高温多湿、梅雨の時期、雪の季節は種の育成には向いていません。

日本に輸入される野菜の種を国別に見ると、輸入ランキング(数量)はアメリカ、イタリア、デンマーク、チリ、ニュージーランド、中国の順になっています。

野菜は、それぞれの地域の環境に適したように、たくましく育ち、栄養素を蓄えて、種にも栄養素を多く残します。現在の日本のように、夏場は亜熱帯地域と変わらない環境になると、種の成育に適した地域とは異なる環境の猛暑の日本では充分に育ってくれません。

その証拠と言える野菜が生育中に枯れる、腐る、中に栄養が入っていないといったことは、メディアで繰り返し伝えられています。

卵の栄養価が低下しているのも、猛暑が関係しています。暑さのために餌を食べられないので黄身に栄養が入らない、卵が充分に大きくならないということですが、日本で販売されている卵を産むニワトリ(採卵鶏)の多くは雛(ヒヨコ)の状態で海外から輸入されています。その割合は95%にもなっています。

以前は東南アジアからの輸入が多かったのですが、今ではイギリス、アメリカ、オランダ、カナダ、フランス、ニュージーランドなどで、暑い環境で育った雛ではありません。それが猛暑の日本で卵を産むことによって黄身の栄養価に影響が出ているということです。

こういったことを、これまでとは違う切り口の栄養学講習で伝えています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕