そこが知りたい66 「しめじ」と「えのき」

糖尿病は成人(約1億人)の10人に1人が患者(約1000万人)、10人に1人が予備群(約1000万人)と言われています。

このような調査結果は、以前は「国民健康・栄養調査」で公表されていたのですが、コロナ禍を経て、調査対象の割合で発表するようになって、患者と予備群の数がわかりにくくなりました。

これは高血圧などの生活習慣病についても同様で、危機感が薄れてしまうのではないかとの不安があり、糖尿病の恐ろしさを伝える立場の専門家(医師、栄養士など)から、どのように伝えればよいか相談されることがあります。

それに対して、今さらかと思われるような用語を使って、糖尿病は血管の病気であることを伝えることを提案しています。

それが今回のお題にある「しめじ」と「えのき」です。

「しめじ」は糖尿病の合併症の神経障害、目の網膜、腎症の頭文字をとったもので、合併症の中でも比較的初期の段階で見られるものです。神経細胞、網膜、腎臓は細小血管が密集している器官で、細くて弱い血管であるので症状が現れやすい特徴があります。

高血糖状態によって傷ついた細小血管は元に戻ることはないので、血糖値が高い状態が続くと、どんどんと悪化していくことになります。目では失明、腎臓では腎不全という末期の症状があります。

神経障害のために皮膚が傷ついても気づかずに、腐ってしまうことは壊疽(えそ)というのですが、それは「えのき」の「え」です。壊疽、脳卒中、虚血性心疾患は糖尿病が進行した状態で現れる合併症で、壊疽では足の切断という恐ろしいことも覚悟する必要があります。

脳卒中と虚血性心疾患は太い血管がダメージを受けた結果で、その先には脳血管疾患、心臓病という死亡原因の上位を占める恐ろしい結果が待っています。

「しめじ」も「えのき」も、ともにキノコの種類ですが、キノコによって悪化するという意味ではなくて、またキノコを食べれば予防できるという意味ではないことは、今さら言う必要もないことかと思います。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕