「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から疾患を有する者を紹介します。
〔疾患を有する者〕
糖尿病患者の基礎代謝量は、体組成で補正した場合、耐糖能正常者に比べて差がないか、5〜7%程度高いとする報告が多くなっています(肝臓の糖新生などによるエネルギー消費によると考えられる)。
保健指導レベルの高血糖者で検討した研究は少ないものの、横断研究で睡眠時の代謝量は「耐糖能正常<耐糖能異常<糖尿病」の関連があり、同一個人に基礎代謝の継時的変化も「耐糖能正常<耐糖能異常(+4%)<糖尿病(+3%)」でした。
これらの差は僅かであるため、保健指導レベルの高血糖の者(空腹時血糖:100〜124mg/dl)では、耐糖能正常者と大きな差はないと考えられます。
また、二重標識水法による糖尿病患者のエネルギー消費量を見た研究によると、糖尿病患者と耐糖能正常者で、身体活動レベルとエネルギー消費量に有意差を認められていません。
したがって、保健指導レベルの高血糖者のエネルギー必要量は健康な者とほぼ同じと考えて体重管理に当たってよいものと考えられます。一方、糖尿病を含む種々の疾患を有する者のエネルギー摂取量の設定は、それぞれの診療ガイドラインを参照することを推奨しています。
このように、個人でも集団でもエネルギー必要量を正しく推定することは難しくなっています。そのため、エネルギーの過不足の判定と管理には、推定エネルギー必要量は用いずに、体重の変化(1回しか測定できない場合は肥満度などの体格指数)を用いることが望ましいとしています。
推定エネルギー必要量は、主として給食管理に置いて参照すべき値です。この場合でも、給食の目的は推定エネルギー必要量を提供することに終わるものではありません。摂取条項と体格の変化を定期的に把握して、適切なエネルギーを摂取できるように努めなければなりません。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕