「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から健康の保持と欠乏の回避の「窒素出納法によるたんぱく質維持必要量」(特に性差・年齢差)について紹介します。
◎窒素出納法によるたんぱく質維持必要量
たんぱく質の必要量は、窒素出納法を用いて研究が進められてきました。各国の食事摂取基準は、窒素出納法によって得られたたんぱく質維持必要量を用いて、たんぱく質の必要量を算定しています。
具体的には、これらの測定結果に基づき、アメリカ・カナダの食事摂取基準では19歳以上のすべての年齢区分において男女ともにたんぱく質維持必要量(平均値)を0.66g/kg 体重/日としており、2007年に発表されたFAO/WHO/UMU(国際連合食糧農業機関・世界保健機関・国際連合大学)によるたんぱく質必要量に関する報告でも同じ値を全年齢におけるたんぱく質維持必要量としています。
15〜84歳を対象として行われたメタ・アナリシス(28研究、合計対象者数348人)は、維持必要量は0.66(平均、95%信頼区間は0.64〜0.68)g/kg 体重/日であったと報告されています。
このサブ解析では、性差、年齢差〔若年・中年(60歳未満)と高齢者(60歳以上)の間〕はともに認められていません。
小児を対象とした10の研究では、維持必要量を0.67g/kg 体重/日(平均)と報告しており、前述の成人の値とほぼ同じでした。
ただし、これには成長に伴う体たんぱく質の増加分は含まれていません。
なお、窒素出納法を用いて高齢者を対象としたたんぱく質の維持必要量を測定した研究の中には、0.83g/kg 体重/日、0.91g/kg 体重/日といった高い値を報告した研究もありますが、この理由については、まだ十分には明らかになっていません。
なお、窒素出納法の実験は、すべて良質なたんぱく質を用いて行われています。したがって、この値を、そのまま食事摂取基準の推定平均必要量とすることはできません。そこで、ここでは窒素出納法を用いた研究で得られた数値をたんぱく質維持必要量と呼ぶこととしています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕