食事摂取基準71 健康の保持2

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から健康の保持と欠乏の回避の「窒素出納法の限界と課題」について紹介します。

◎窒素出納法の限界と課題
窒素出納法には様々な限界があり、その結果を活用する場合には注意を要します。

例えば、窒素出納法ではすべての窒素摂取量とすべての窒素排泄量について正確に定量する必要があります。

窒素摂取量は、皿などからこぼしたものや皿に残っているものなど摂取できなかった食物のすべてを集めることは難しいため、摂取量を高く見積られる可能性が高くなっています。

身体からの窒素排泄量は主に尿と糞便ですが、これ以外にも皮膚、汗、落屑、毛髪、爪など様々な体分泌物による損失もあります。

そのために、総排泄量は高く見積られるよりも低く見積られる可能性が高くなっています。その結果、たんぱく質摂取量を高く見積り、たんぱく質排泄量を低く見積もるので、窒素出納が正に誤って算出されやすくなります。

したがって、窒素出納法では、たんぱく質またはアミノ酸必要量は低く見積られる傾向となります。

また、以前のたんぱく質必要量に関する実験では、エネルギー出納が正の条件で行われる傾向があり、たんぱく質必要量が低く見積られた研究があったのではないかと推測されます。これらは、系統的に必要量を過小に見積もる方向に働くために注意を要します。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕