食事摂取基準83 生活習慣病等の発症予防4

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から生活習慣病等の発症予防の「生活習慣病及びフレイルとの関連」の目標量の策定方法を紹介します。

〔目標量の策定方法〕
*成人・高齢者・小児(目標量)
推奨量と目標量のそれぞれの定義から考えて、そのいずれか一方を満たすのではなく、推奨量を満たした上で、主な生活習慣病やフレイルの発症予防を目的とする目標量を満たさなければなりません。

1歳から64歳の年齢区分(非妊婦・非授乳婦)において、性・年齢区分・身体活動レベル「低い」の推定エネルギー必要量(kcal/日)を用いて、たんぱく質の推奨量(g/日)を%エネルギーで表現すると、19〜29歳女性と50〜64歳女性の値は、11.8%エネルギーと最も高い値となります。

65歳以上の男女については、その性・年齢区分・身体活動レベル「低い」の推定エネルギー必要量(kcal/日)を用いて、たんぱく質の推奨量(g/日)を%エネルギーで表現すると、11.4〜13.8%エネルギーとなります。

ただし、高齢者においては特にフレイルとサルコペニアの発症予防も考慮した値であることが望まれます。

65歳以上の男女については、その性・年齢区分・身体活動レベル「低い」の推定エネルギー必要量(kcal/日)を用いて、フレイルとサルコペニアの発症を予防する可能性があるたんぱく質量(1.2g/kg 体重/日)を%エネルギーで表現すると、14.9〜16.6%エネルギーとなります。

以上より、目標量(下限)は、1歳から49歳(男女共通、非妊婦・非授乳婦)では、13%エネルギー、65歳以上(男女共通)で15%エネルギーとしました。

なお、50〜64歳(男女共通、非妊婦・非授乳婦)では、1歳から49歳までと65歳以上の値の間をとって、14%エネルギーとしました。

目標量(上限)は、耐容上限量を考慮すべきです。たんぱく質には耐容上限量は設定されていませんが、20〜23%エネルギー前後のたんぱく質摂取については、成人においては各種代謝変化に、高齢者においては腎機能に好ましくない影響を及ぼす可能性が考えられることから、検証すべき課題として残されていることがスシテマティック・レビューによって結論づけられています。

以上より、十分な科学的根拠はまだ得られていないものの、目標量(上限)は1歳以上の全年齢区分において20%エネルギーとすることとしました。

なお、特定の疾患の管理を目的としたたんぱく質摂取量の制限や多量摂取が必要な場合は目標量ではなく、そちらを優先すべきです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕