「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から「生活習慣病等の重症化予防」「今後の課題」を紹介します。
〔生活習慣病等の重症化予防〕
たんぱく質が関与した重症化予防の対象となる疾患として、フレイル(サルコペニアを含む)と慢性腎臓病があります。
なお、研究報告はあるものの、その数と質が十分ではなく、一定の結論が得られていないと判断されたものは、ここでは触れていません。
◎フレイル
フレイルまたはフレイルの前段階であるプレフレイルを有する者を対象に、プレフレイルからフレイルへの移行やフレイルの重症化を検証したコホート研究があるものの、結果は一貫していません。
このように、研究の数・質ともにまだ十分ではなく、フレイルを改善させるためのたんぱく質摂取量に関して結論を出すことは難しくなっています。
◎慢性腎臓病
慢性腎臓病(CKD)における食事療法として、腎臓の保護を目的にたんぱく質摂取量の制限が主眼に置かれています。
CKDへのたんぱく質摂取制限の有効性は、その制限量やCKDの進行ステージ、またアウトカムとする腎機能の指標によって異なることが、複数のレビューやメタ・アナリシスによって報告されています。
〔今後の課題〕
たんぱく質の必要量設定には、日常生活下(通常の食事や身体活動の状況下)におけるたんぱく質摂取代謝を維持するために必要なたんぱく質摂取量を評価することができる指標アミノ酸酸化法によって、測定されたデータを構築していく必要があります。
また、介入試験における課題としては、介入による付加量が明らかであったとしても、総たんぱく質摂取量が明らかな介入研究(試験デザイン)が少なかったことや、サプリメントなどによる摂取量が多いために通常の食事の摂取範囲を逸脱した介入研究が多く、食事摂取基準の策定は難しくなっています。
今後の目標量や耐容上限量の設定には、たんぱく質を摂取した「量」を評価することができる手法によって評価されたエビデンスの蓄積が求められます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕