食事摂取基準86 脂質の基本的事項1

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から脂質の基本的事項の「定義と分類」を紹介します。

〔定義と分類〕
脂質(lipids)は、水に不溶で、有機溶剤に溶解する化合物です。

栄養学的に重要な脂質は、脂肪酸(fatty acid)、中性脂肪(neutral fat)、リン脂質(phospholipid)、糖脂質(glycolipid)、ステロール類(sterols)です。

脂肪酸は、炭化水素鎖(水素と炭素のみからできている)の端末にカルボキシ基を有して、総炭素数が4〜36の分子です。カルボキシ基があるため生体内の代謝が可能になり、エネルギー源として利用され、また細胞膜の構成成分になることができます。

脂肪酸には炭素間の二重結合がない飽和脂肪酸、1個存在する一価不飽和脂肪酸、2個以上存在する多価不飽和脂肪酸があります。

さらに、多価不飽和脂肪酸はメチル基末端からの最初の二重結合の位置によって、n–3系脂肪酸(メチル基末端から3番目)とn–6系脂肪酸(メチル基末端から6番目)に区別されます。

二重結合のある不飽和脂肪酸には幾何異性体があり、トランス型とシス型の2つの種類があります。

自然界に存在する不飽和脂肪酸のほとんどはシス型で、トランス型は僅かです。中性脂肪は、グリセロールと脂肪酸のモノ、ジ、トリエステルであり、それぞれモノアシルグリセロール、ジアシルグリセロール、トリアシルグリセロール(トリグリセライド、トリグリセロール、中性脂肪)といいます。

リン脂質は、リン酸をモノまたはジエステルの形で含む脂質です。糖脂質は、1個以上の単糖がグリコシド結合によって脂質部分に結合している脂質です。

コレステロールは、4つの炭素環で構成されているステロイド骨格と炭化水素側鎖を持つ両親媒性の分子であり、脂肪酸とは、その構造が異なります。

しかし、食品中では、その大半が脂肪の中に存在することや、その栄養学的な働きの観点から、本章に含めて検討することとしました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕