日々修行の目標であった366回(閏年の1年の日数と同じ)は、好きなことを書いて連載コラムを締めくくることにしました。
“暗黙のルール”という言葉があって、勝ったとしても負けたことにするとか、その逆に負けたとしても勝ったことにするというのは理不尽であっても、それを善しとするムードが漂っている会社や団体と付き合っている限りは、避けて通ることができません。
暗黙のルールを変えることができるのは、そのルールを認めてきた人たちだけだと思って長らく過ごしてきたところがあるのですが、「そんなの関係ない!」と言いたくなるほど次々と大変革が起こっているのは今年で、さまざまな世界で2025年は「大変革の時代」という言葉が聞かれます。
その多くは法律や制度が変わったことや、誰もが覆すことができない数の変化であって、前者でいえば定年退職年齢が4月から65歳に引き上げられて、70歳までの雇用が努力義務化されました。
そのため60代で引退するということが言いにくくなっています。69歳、70歳まで仕事をするのは当たり前という“暗黙のルール”が、これからの社会、そこで暮らす人の心身の健康問題に大きな影響を与えることになります。
後者で言えば、2025年は団塊の世代の全員が75歳以上になる年で、全国民の5人に1人が75歳以上の後期高齢者になるという、世界の誰もが経験したことがない恐ろしい時代であるので、これまでの常識での大変革は通じなくなってきます。
あまり脅かすようなデータは、ここではヤメにしておいて、ゲームの世界の話を書くことにします。ゲームといっても今のデジタルの世界ではなくて、実にアナログな「黒ひげ危機一発」(タカラトミー)の話です。
樽の中に閉じ込められている海賊を脱出させるために短剣を刺してロープを切っていくという設定の、今さら説明することもない知られた存在です。
この有名なゲームのヒットが“危機一髪”を“危機一発”と間違って覚えられる原因になった、とも言われています。
当時のトミーから初めて登場したのは1975年のことで、今から50年も前のことです。当初は脱出させることが目的なので、飛び出たら勝ちというルールで、それは商品パッケージにも説明書にも書かれていました。
ところが、翌年の1976年にテレビのクイズ番組で、勝った人が最後の挑戦として「黒ひげ危機一発」に短剣を刺して、飛び出たら得点が没収ということを始めました。その影響で飛び出たら勝ち(目的達成)ではなくて、飛び出たら負けというルールが広まっていきました。
これに対応するように、どちらの結果でもよくて、それはゲームを始める前に参加者で決めることが1979年にルールとして書かれました。
このことは2006年にタカラとトミーが合併してタカラトミーとなってからも続いていたのですが、50周年を迎えたことをきっかけに初めのルール(飛び出たら勝ち)という“原点回帰”を行いました。
これは公式ルールということですが、それでも勝ち負けのルールを勝手に決めることができます。
ラストに「黒ひげ危機一発」の話を書いたのは、これまでの常識で仕事をしてきて、最後の最後に常識を否定される、やってきたことがひっくり返されることが大変革の時代の始まりの年(2025年)からはなくなることを願ってのことですが、まだまだ望み薄かもしれません。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕