金言の真理8「任せて任さず」1

松下幸之助さんには、経営姿勢に関する金言・名言が数多く残され、今に伝えられています。

その一つが今回のお題の「任せて任さず」で、この言葉はPHP研究所でゴーストライターを務めていた15年間で、松下さんの講話録や著書の中で使わせてもらっただけでなく、他の場面でも何回か使ったことがあります。

それほど使い勝手がよい、というよりも、なるほどと納得がいく経営の極意としても伝えられるべき意味と意義がありました。

松下さんは、従業員に仕事を与えるときには、その長所や特性を見て、経験や実績がなくても、潜在能力を信頼して仕事を任せてきました。このことがあったことから、多くの人材を育てることができたということです。

その任せる範囲も、ただ自分ならできること、自分が信頼する社員ならできることの一部をやらせるということではなく、任せると決めたからには、大胆に仕事を与えて、責任も権限も与えてきました。

ただ仕事を任せきり、任せっ放しというのではなく、任せるからには成功をするように道筋を立てて、その目的を理解させ、目的を達するために何をすればよいか考えることができるように条件を整えています。

このことを「任せると言っておいて、誘導をしているだけではないか」と後になって批判的に書いた文を見たことがありますが、そのようなことはありません。

任せる限りは、任せるほうも安心、任せられるほうも安心という環境と、その環境に適した人を配置することが大切で、お互いの信頼があってこそ実現できることです。

なぜ、そのようなことはないと書いたのかというと、松下さんは病弱であったことから、理想とすることを達成するためには、個人経営の時代から他の人に仕事を任せてきたからです。

成功も失敗もあり、手出しをしたほうがよいと思ったこともあったそうですが、「結果として大胆に任せてきたことで今がある」ということを直接、うかがわせてもらいました。
〔セカンドステージ連盟 小林正人〕