食の不都合な真実5 F1種という品種改良

野菜の種子は、その野菜から採取することができるというのは長らく続いてきた伝統性な製法であって、それが今も続いていると思われがちです。しかし、日本で栽培されている野菜の種子の多くは海外で採取されたものが輸入されているのが実態です。

現在では野菜の種子の90%は輸入されていて、国内産は10%ほどでしかありません。

このようなことを書くのは、若いときに種苗業界の業界紙の取材をさせてもらった経験があるからで、それは桃太郎トマトが登場した時期でした。

それまではトマトというと、半分が赤くて半分が青いものが店頭で多く売られていました。

半分が青いという表現は今の若い人には違和感があるかもしれないのですが、これは緑色のことです。野菜を販売する八百屋は“青物屋”と言われますが、緑色のものを青色と表現するのは日本独特の感性です。

そのような半分が赤くて半分が緑色のトマトは見られなくなって、それと同じ状態であっても全体がピンク色というトマトがタキイ種苗によって開発されたのは1985年のことでした。

その時期は新品種の野菜が相次いで登場した時期で、ほうれん草がサラダで食べられるようになり、アク抜きがいらないというような画期的なことが業界で次々と起こりました。

多くの野菜が食べやすい、形がよい、色がよい、育てやすい、収量が多い、種が少ない(もしくは種がない)、流通で傷みにくいという売りやすく、食べやすい野菜となったのですが、これはF1種(一代雑種)というタイプの特徴といえます。

F1種は異なる品種を交配して新たな品種を作り出す品種改良法で、狙いどおりの品種を作り出すことはできても、自家採種ができないというデメリットがあります。

野菜は種子を残して、これを使って栽培を拡大させるという方法があるわけですが、その自家採種はF1種では望むことができません。
ということは、毎年、種を買わないと野菜が育てられないという種苗業界にとっては“素晴らしい発明”ということができるわけです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕