「情けは人の為ならず」は、他人のためではなくて、実は自分のためになることだということを2回にわたって書いてきましたが、締めくくりの3回目は「人の為」は本当のことなのか、ということに触れることにします。
これは、実際には人のためになっていないのではないか、ということを言いたいからではなくて、漢字の組み合わせがイメージと異なることになるのではないか、という話をしたいからです。
「人」は、漢字の部首の人偏(にんべん)と同一に考えられていて、「イ」の形で表現されます。「為」はそのままの形ですが、これを合体させると「偽」となります。
「偽」は、偽(にせ)、偽り(いつわり)を表していて、本物ではないもの(こと)を本物らしく見せかけることを意味しています。
合体させるのではなくて、横並びにすると「人為」という言葉になります。これは自然の成り行きのままではなくて、人手が加わることを表していて、そこ人手は、悪いたくらみ意味しています。
人の為と書いたら偽になり、人為では悪いたくらみということでは、よくないイメージしか残らなくなります。
「情けは人の為ならず」の本来の意味はプラスの印象であるのに、「人の為」となるとマイナスの印象にもなってしまうことから、他人に対して情けをかけることは悪いことというイメージで捉えられてしまう要因にもなっているようです。
とはいえ、周囲の人とコミュニケーションを取るときに、正しい意味で使っている人と誤用の人がいたのでは、行き違いになってしまうので、そこだけは確認しておく必要があります。
〔セカンドステージ連盟 小林正人〕