食事摂取基準113 トランス脂肪酸3

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中からトランス脂肪酸の「目標量の策定」を紹介します。

〔目標量の策定〕
必須脂肪酸でないため、必要量は存在しません。一方、冠動脈疾患の明らかな危険因子の1つであり、目標量の算定を考慮すべき栄養素です。

「LDLコレステロール/HDLコレステロール」の比への影響を考えると、その影響は摂取量が同じ場合、トランス脂肪酸のほうが飽和脂肪酸よりも2倍程度大きくなっています。

これに現在の摂取量(日本人成人の平均摂取量は、トランス脂肪酸で0.3%エネルギー程度、飽和脂肪酸の7%エネルギー程度)を考慮すると、トランス脂肪酸の影響は、飽和脂肪酸の影響の12分の1程度〔=(0.3×2)/(7×1)〕となります。

トランス脂肪酸が冠動脈疾患の明らかな危険因子の1つですが、欧米に比較して日本人の摂取量は少ないと考えられ、その健康影響に関する報告はいまだ十分ではないことを勘案して、目標量は策定しないこととしました。

ただし、これはトランス脂肪酸の摂取量を現状のままに留めてよいという意味ではありません。
日本人の大多数は、トランス脂肪酸に関するWHOの目標を下回っており、通常の食生活ではトランス脂肪酸の摂取による健康への影響は小さいと考えられているものの、さまざまな努力によって(飽和脂肪酸に置き換えるのではなく)平均摂取量をさらに少なくして、また多量摂取者の割合をさらに少なくするための具体的な対策が望まれます。

ところで、WHOをはじめ、アメリカなどいくつかの国では、トランス脂肪酸の摂取量を総エネルギー摂取量の1%未満に留めることを推奨しています。

したがって、あくまでも参考値ではあるものの、日本人においてもトランス脂肪酸の摂取量は1%エネルギー未満に留めることが望ましく、1%エネルギー未満でもできるだけ低く留めることが望ましいと考えられています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕