食事摂取基準116 食事性コレステロール3

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から食事性コレステロールの「生活習慣病の発症予防」の後半を紹介します。

〔生活習慣病の発症予防〕
我が国で行われたコホート研究でも、ほぼ同様に、虚血性心疾患や脳卒中死亡率、心筋梗塞発症率との間に有意な関連は認められていません。

また、類似の目的で行われたコホート研究のメタ・アナリシスでは、週に6個までの中程度の卵摂取と循環器疾患発症率または死亡率との間に負の関連を認めています。

一方で、アメリカで行われた6つのコホート研究のデータをプールして解析した研究では、コレステロール摂取量と卵摂取量、循環器疾患発症率と総死亡率と間に、いずれも有意でほぼ直線的な正の関連が観察されています。

類似の目的で行われたコホート研究のメタ・アナリシスにおいて、卵摂取量と循環器疾患発症率の間に正の関連を認めていますが、アジアからの研究に限定すると有意な関連を認められていません。

このように、これらの疫学研究の多くにおいて、コレステロール摂取量摂取量(または卵摂取頻度)と循環器疾患発症率、死亡率との間に一貫した関連は示されていません。

しかし、血中コレステロールへの影響を考慮すると、疫学研究の多くにおいて一貫した結果が得られなかったとしても、これをもってコレステロール摂取量の上限を設けなくてもよいとは言えません。

その一方で、コレステロール摂取量を変化させて血中コレステロールの変化を観察した介入試験においても、明確な閾値が観察されていないため、上限を決めるための根拠として用いるのは難しくなっています。

以上より、少なくとも循環器疾患予防(発症予防)の観点からは目標量(上限)を設けるのは難しいと考え、設定しないこととしました。

しかしながら、これは許容されるコレステロール摂取量に上限が存在しないことを保証するものではないことに強く注意すべきです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕