「肩をなでおろす」という言葉の意味として、「心を占めていた心配事がなくなって安心する、安堵する」と説明されることがあるのですが、これは誤用です。
正しい使い方は「胸をなでおろす」で、その意味を辞書で引くと「心を占めていた心配事がなくなって安心する、安堵する」といった言葉が出てきます(辞書によって表現は違う)。
肩と胸は近いところで、両方とも「なでおろす」と行為も同じなので、どちらでも構わないと考える向きがあるものの、日本語はそんな大雑把な感覚で済ませられるようなものではありません。
「肩をなでおろす」という誤用は、「肩を落とす」や「肩をすくめる」からきたのではないかと説明されることがあります。
「肩を落とす」は、期待した結果が得られない(失敗した)ために、ガッカリして気力がない状態を指しています。「肩をすくめる」は、どうしようもないこと、あきらめの心境のことで、両肩を上下させて手のひらを上に向ける欧米人が見せることが多い、まさに“すくめる”ポーズです。
肩は多くの慣用句に使われていますが、なぜ「胸をなでおろす」が「肩をなでおろす」と誤った使い方をされるようになったのかというと、これは「肩の荷が下りる」と混同した結果と考えられています。
「肩の荷が下りる」は責任や負担から解放されて楽な気分になることを指していて、「胸をなでおろす」の心を占めていた心配事がなくなって安心すると意味合いが似ていることも、混同の原因と考えられています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕