「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から「食物繊維」を紹介します。
〔食物繊維〕
炭水化物は多様な化合物を含み、健康影響を考える際には総体としての摂取量ではなく、その質が問われるようになってきました。
WHOのガイドラインでは、炭水化物摂取量そのものではなく、炭水化物摂取源となる食品の種類と摂取量、食物繊維摂取量について推奨される事項が示されています。
食物繊維は、数多くの生活習慣病の発症率または死亡率との関連が検討されており、メタ・アナリシスによって数多くの疾患との間に有意な負の関連が報告されている稀な栄養素です。
代表的なものとして、総死亡率、心筋梗塞の発症と死亡、脳卒中の発症、循環器疾患の発症と死亡、2型糖尿病の発症、乳がんの発症、胃がんの発症、大腸がんの発症などがあります。
また、メタボリックシンドロームの発症率との関連を検討したメタ・アナリシスも存在します。
これらの報告は、総合的には食物繊維摂取量が多いほど、これらの発症率や死亡率が低くなる傾向を認めています。
食物繊維摂取量が多いと体重や収縮期血圧、総コレステロール値が低いことも報告されています。食物繊維摂取量が多いと排便頻度が高いことや、食物繊維の投与が慢性便秘の改善に効果的であることが報告されています。
どの程度の量で慢性便秘の予防や改善が認められるかについては研究結果が一致していませんが、これは食物繊維のうちでも、摂取するものの水溶性・不溶性の別の発酵性の違いによって排便への影響が異なるためと考えられています。
以上のように、食物繊維は摂取不足が生活習慣病の発症に関連するという報告が多いことから、目標量を設定することとしました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕