食事摂取基準127 炭水化物10

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から炭水化物の「生活習慣病の重症化予防」を紹介します。

〔生活習慣病の重症化予防〕
生活習慣病の発症予防と同様に、栄養学的な側面からみた炭水化物の最も重要な役割は、重症化予防においてもエネルギー源としての働きと血糖上昇作用です。

エネルギー源としての炭水化物摂取(制限)の効果は肥満症患者と過体重者を対象とした多数の介入試験で検証されています。

結果のばらつきは大きいものの、炭水化物制限食が有する減量効果は、同じエネルギー量を有する脂質とたんぱく質制限食と有意に異なるものではないとしたメタ・アナリシスが多くなっています。

これは、炭水化物摂取量の制限によって総エネルギー摂取量を制限すれば減量効果を期待できますが、炭水化物摂取量の制限によって減少させたエネルギー摂取量を他の栄養素(脂質またはたんぱく質)で補い、総エネルギー摂取量が変わらない場合には減量効果は期待できないことを示しています。

糖尿病患者または高血糖者を対象として、炭水化物摂取量を制限したときの血糖値(またはHbA1c値)の変化を観察した介入試験は多数存在します。

これらの研究をまとめたメタ・アナリシスでは、短期間(6〜12か月)であれば、炭水化物制限食を摂取した群では対照群(通常食、高炭水化物食、低脂肪食など)に比べて有意なHbA1cの低下が観察されましたが、12〜24か月以降ではHbA1cの低下幅は小さくなり、観察されても僅か、あるいは観察されなかったと報告されています。

これは、現実的に実行可能かつ他の栄養素による健康への不利益が生じない範囲で、糖尿病の管理に求められる十分に長い期間にわたって行うべき食事療法として、炭水化物摂取量の制限は現時点では勧められないことを示しています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕