食事摂取基準128 炭水化物11

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から食物繊維の「生活習慣病の発症予防」を紹介します。

〔生活習慣病の発症予防〕(目標量の策定方法)
*成人・高齢者(目標量)
食物繊維摂取量と主な生活習慣病の発症率または死亡率との関連を検討した疫学研究(及び、そのメタ・アナリシス)のほとんどが負の関連を示しています。

例えば、WHOの炭水化物摂取量に関するガイドラインで採用された185の前向き研究と58の介入試験をまとめたメタ・アナリシスでは、少なくとも1日当たり25〜29gの食物繊維の摂取が、さまざまな生活習慣病のリスク低下に寄与すると報告されています。

一方で、同研究では食物繊維摂取量と生活習慣病リスクとの間に明らかな閾値が存在しないことも指摘されていて、より多く摂取量で更なる疾病罹患リスクの低下が認められる可能性を示唆しています。

以上より、健康への利益を考えた場合、「少なくとも1日当たり25g」の食物繊維を摂取したほうがよいと考えられます。

しかし、平成30年・令和元年国民健康・栄養調査に基づく日本人の食物繊維摂取量の中央値は、すべての年齢区分で、これよりかなり少なくなっています。そのために、この値を目標量として掲げても、その実施可能性は低いと言わざるを得ません。

現在の日本人成人(18歳以上)における食物繊維摂取量の中央値(13.3g/日)と、25g/日との中間値(19.2g/日)をもって目標量を算出するための参照値としました。

次に、成人(18歳以上男女)における参照体重(58.6kg)と性・年齢区分ごとの参照体重を用いて、その体重比の0.75乗を用いて体表面積を推定する方法によって性・年齢区分ごとの目標量を算出しました。

具体的には、「19.2(g/日)×〔性・年齢区分ごとの参照体重(kg)÷58.6(kg)〕」によって得られた値を整数にした上で、隣り合う年齢区分間で値の平滑化を行いました。

ところで、目標量の算定に用いられた研究の多くは、通常の食品に由来する食物繊維であり、サプリメントなどに由来するものではありません。

したがって、同じ量の食物繊維を通常の食品に代えてサプリメントなどで摂取したときに、記されたものと同等の健康利益を期待できるという保証はありません。

さらに、食品由来で摂取できる量を超えて大量の食物繊維をサプリメントなどによって摂取すれば、記されたよりも多くの(大きな)健康効果が期待できるとする根拠はありません。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕