「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から食物繊維の「生活習慣病の発症予防」の後半を紹介します。
〔生活習慣病の発症予防〕(目標量の策定方法)
*小児(目標量)
食物繊維摂取量が、対象とする生活習慣病などの発症や重症化予防に直接に関与しているとする報告は小児では乏しくなっています。
小児期〜思春期の食物繊維摂取量と後の体重や血清脂質、血糖値などとの関連を見たコホート研究を集めたシステマティック・レビューでも、この年代でのエビデンスは十分ではなく、成人の摂取量からの外挿で小児の食物繊維摂取量の指標を定めることを提案しています。
生活習慣病の発症には長期間にわたる習慣的な栄養素摂取量が影響することから、小児期の食習慣が成人後の循環器疾患の発症やその危険因子に影響を与えている可能性が示唆されています。
また、小児期の食生活は、その後の食習慣にある程度影響しているという報告も複数あります。このようなことにより、小児期においても食事摂取基準を設定することが勧められています。
小児において発生頻度の高い健康被害として便秘があげられます。高食物繊維摂取が便秘の改善に及ぼす効果をまとめたシステマティック・レビューでは、高食物繊維摂取は便秘の改善に効果があるとした報告が存在すると記述されています。
また、高食物繊維摂取者で便秘保有率が低い傾向があるとした横断研究も我が国に存在します。しかしながら、いずれの報告でも明確な閾値は示されておらず、量的な議論は乏しくなっています。そのため、これらの報告を目標量の算定に利用するのは難しいと考えられます。
ところで、近年に全国調査において、3〜5歳の小児における食物繊維摂取量の中央値は8.7g/日(男児)、8.5g/日(女児)と報告されています。
3歳未満の小児については、我が国における摂取実態の詳細は明らかになっておらず、目標量を算定する根拠が乏しいことから、3〜17歳については成人と同じ方法で目標量を算出することとしました。
なお、算出された目標量よりも現在の摂取量の中央値の方が多い場合には、現在の摂取量の中央値を目標量としました。
*妊婦・授乳婦(目標量)
生活習慣病の発症予防の観点から見て、妊婦と授乳婦が同年齢の非妊娠と非授乳中の女性と異なる量の食物繊維を摂取すべきとするエビデンスは見いだせません。
したがって、目標量は妊娠可能年齢の非妊娠と非授乳中の女性と同じとしました。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕