「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、各論のエネルギー・栄養素について説明しています。その中から脂溶性ビタミンのビタミンAの「消化、吸収、代謝」を紹介します。
〔消化、吸収、代謝〕
ビタミンAは、動物性食品から主にレチニル脂肪酸エステルとして、植物性食品からプロビタミンAであるカロテノイドとして摂取されます。
レチニル脂肪酸エステルは小腸吸収上皮細胞において、刷子縁膜に局在するレチニルエステル加水分解酵素によってレチノールとなって細胞内に取り込まれます。レチノールの吸収率は70〜90%です。
β−カロテンの大部分は、小腸吸収上皮細胞において中央開裂によって2分子のビタミンA(レチナール)を生成します。
他のプロビタミンAカロテノイドは、中央開裂によって1分子のビタミンAを生成します。
β−カロテンの吸収率は、精製β−カロテンを油に溶かしたβ−カロテンのサプリメントを摂取した場合と比べると1/7程度です。しかし、通常の食事での適用を踏まえ、アメリカ・カナダの食事摂取基準に倣って1/6としました。
β−カロテンからレチノールへの変換効率は、従来通り50%、すなわち1/2と見積もると、食品由来のβ−カロテンのビタミンAとしての生体利用率は、1/12(=1/6×1/2)となります。
したがって、食品由来のβ−カロテン12μgはレチノール1μgに相当する量(レチノール活性当量:RAE)であるとして、換算することとしました。
そこで、すべての食品中のビタミンA含量はレチノール活性当量として求められます。
「レチノール活性当量(μgRAE)=レチノール(μg)+β−カロテン(μg)×1/12+α−カロテン(μg)×1/24+β−クリプトキサンチン(μg)×1/24+その他のプロビタミンAカロテノイド(μg)×1/24」
なお、サプリメントとして摂取する油溶化β−カロテンは、ビタミンAとしての生体利用率が1/2程度なので、従来どおり2μgのβ−カロテンで1μgのレチノールに相当し、食品由来のβ−カロテンとは扱いが異なります。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕






